津波対策の概要
中部電力では浜岡原子力発電所の津波に対する安全性をより一層高めるため、多重化した対策工事をしています。浸水防止対策と緊急時対策に大きく分けられる工事の内容を下表に記載致します。
尚、以下に記す計画は見学時点のものであり、中部電力では福島第一原子力発電所の事故調査や中央防災会議の検討における新たな知見に対し、適切に必要な対策を講じるとしており、変更されることがあります。
敷地内浸水防止(防波壁の設置)
砂丘堤防の内側(*T.P.+6m)に高さ12m、厚さ2m、総延長1.6kmの防波壁(T.P.+18m)を設置し、津波が発電所敷地内に直接侵入することを防止します(図-1 [1])。基礎部は、地中の岩盤に穴を掘り根入れされており、深い所では30mになるそうです。見学時点では基礎部の工事は完了しており地上部分の防波壁は総延長(約1.6km)の内、半分程度が完成しておりました。発電所敷地前面砂丘堤防の一部と左右両端部の盛り土のかさ上げ工事も施工しています(図-1 [2])。
*東京湾平均海面(日本の標高基準)
一般の見学者が入館できる原子力館には、直径50mmもある鉄筋が組み込まれた防波壁の実物大模型が展示してありました。
敷地内浸水防止(溢水対策)
津波の海水面上昇により取水槽等の水位が上昇しても敷地内に海水が溢れないよう、海水取水ポンプエリアへ高さ1.5mの防水壁を設置しています(図-1 [3])。また放水ピット放水路開口部の閉止により開口部から発電所内への浸水を防止する工事を施工しています(図-1 [4])。
建屋内浸水防止
浜岡原子力発電所では敷地内に津波が浸水しても、海水冷却機能が維持され、更には建屋内への浸水の無いよう、対策工事を行っています。対策は、緊急時海水取水設備の設置などによる「海水冷却機能の維持」、水密扉の設置やシール性の向上による「建屋内浸水防止」、排水ポンプの設置などによる「機器室内浸水防止」など多岐にわたっています。
また、建屋内への浸水防止対策として建屋外壁に設置された防水構造扉も見学時に見ることができました。大物搬入口の重い扉も、防水構造でありながら扉の開閉に時間を要することのない仕組みとなっており、緊急時にも対応できるようになっております。
【原子力研修センター】
原子力研修センターは、原子力発電所の安全性と信頼性をより高めるため、職員を対象に運転訓練用シミュレータや発電所内設備の同等の設備を用いて研修を行う施設です。視察当日も、先に5号機見学ギャラリーで見学した中央制御室と同じような設備がある部屋の中で、トラブル対応訓練を実施しており、訓練後の意見交換の様子が見られました。
また、過去の失敗の事例が展示されている部屋がありました。当時の部品もそのまま残されており、過去の失敗に学び、研修ゾーンとして残すことで、技術を次世代に継承していました。参加者のアンケートにおいて、参考になった、すばらしいというご意見が挙がっておりました。
【緊急時対策所】
緊急時対策所は、2010年に完成した対策本部です。外部の空気が入ってこないよう空調システムや除染室を設け、発電所から放射能が漏えいした際にも対応できる仕組みとなっております。建物の下にも免震装置が取り付けられ、想定東海地震を上回る揺れが生じても、建物の揺れを抑えることができる仕組みとなっております。視察当日も、対策本部の施設内の様子(1F)と建物の下の免震装置を見学させて頂きました。