視察・調査

EPOC企画活動 「網走・知床・北見方面 視察調査」の実施報告

《概要》

日時: 2026年9月14日(月曜日)〜16日(水曜日)
目的: 「生態系保全・脱炭素・資源循環」をテーマとし、中部国際空港における脱炭素・資源循環の取組み、世界自然遺産・知床における自然共生(生態系保全)の取組み、デンソー網走テストセンターにおける自然共生・次世代インフラの取組み、イトムカ水銀リサイクル施設における資源循環・有害物質管理の取組み等の最新の状況を現地現物で視察調査し、各社の環境活動に反映する。
視察調査先:
  1. 中部国際空港株式会社 (空港での環境取組み)
  2. オホーツク流氷館 (オホーツク海の生態系)
  3. 知床五湖 (世界自然遺産)
  4. 株式会社デンソー網走テストセンター (自然共生サイト・走行中無線給電)
  5. 野村興産株式会社 (イトムカ水銀リサイクル施設)
  6. 卯原内サンゴ草群落 (アッケシソウ: 絶滅危惧種�U類)
参加者: 41名
<北海道全体図>

《各施設の視察調査内容》

  1. 中部国際空港株式会社
    �@ 空港の環境取組み(中部国際空港)

    中部国際空港株式会社 地域共生部 事業調整グループ長 鈴木 国博(すずき くにひろ)氏より、空港運営における環境方針のもと、構想・建築段階における環境配慮に加え、脱炭素(SAF:持続可能な航空燃料等)・資源循環(ペットボトル水平リサイクル等)・自然共生(植林・海浜清掃等)の取組み等、持続可能な空港づくりに向けた様々な活動について学びました。

    <講師: 鈴木国博氏>
    �A 航空会社の環境取組み・運航上の工夫等(ANA)

    ANA 名古屋支店長 木村(きむら) みゆき氏 及び B777機長 岩本 裕介(いわもと ゆうすけ)氏より、航空機の運航における現場での工夫によるCO2排出量削減の取組みについてご説明いただきました。当日実際に乗る航空機の飛行計画をもとに、効率的な飛行ルート選択や燃料消費削減に向けた運航技術など、CO2排出量削減への取組みについて学びました。

    <講師: 木村みゆき氏、岩本裕介氏>

    �B 愛知環境賞受賞事例(大和エネルフ他)

    大和エネルフ株式会社をはじめとする関係各社を代表し、J-CIRCULARS株式会社
    代表取締役 下別府 正樹(しもぺっぷ まさき)氏より、愛知環境賞を受賞したプラスチック資源循環スキームについてご紹介いただきました。空港内で発生するプラスチック資源の有効活用や、関係者が連携した資源循環の仕組みについて学びました。

    <講師: 下別府正樹氏>
    �C セントレアのエネルギー対策等(中部国際空港エネルギー供給会社)

    中部国際空港エネルギー供給株式会社 技術・運用部長 市川 和幸(いちかわ かずゆき)氏より、空港内のエネルギー供給設備や省エネルギーの取組みについてご説明いただきました。また、エネルギー供給設備を視察し、空港の運営を支える巨大インフラについて学びました。

    <講師: 市川和幸氏>
    <エネルギー供給施設での視察風景>
    �D 航空機の環境性能向上への取組み(ANA)

    ANA B777機長 の岩本 裕介(いわもと ゆうすけ)氏より、航空分野における環境負荷低減に向けた軽量化(炭素繊維複合材料)・次世代エンジン(高バイパス比)、電気によるエネルギーロス低減等の取組みについて、航空機実機を見ながらご説明いただき、環境性能向上に向けた具体的な施策を学びました。

    <集合写真>

  2. オホーツク流氷館

    オホーツク流氷館では、地球規模の気候や海流によって形成される流氷の仕組みをはじめ、流氷がオホーツク海の豊かな生態系を支える役割について学びました。映像や体験展示を通じて、地域特有の自然環境への理解を深めるとともに、環境保全の重要性について学びました。

    <集合写真>
    <視察風景>

  3. 知床五湖

    世界最南端に接岸する流氷が育む豊かな自然環境と、流氷から始まる生命の循環について学びました。また、海・川・森が一体となってつながる世界的にも貴重な知床の原生的な自然・生態系を、豊富な知識・経験をお持ちのプロのネイチャーガイド(松田氏・藤原氏)によるレクチャーや、実際の森での動物の痕跡や実植物を通じて、生物多様性の重要性等について学びました。また、森の栄養が海に循環している実態を現地で確認することができました。
    さらに、「人とヒグマの共存モデル」に代表されるゾーニングの考え方等、人と自然が共生するためのルールや取組みについて理解を深めました。

    <知床五湖の自然道>
    <集合写真>

  4. 株式会社デンソー網走テストセンター

    株式会社デンソー網走テストセンター 取締役 成瀬 誠(なるせ まこと)氏より、寒冷地という地域特性を活かした自動車の信頼性評価の各種試験・評価技術と、自然共生に向けた取組みの概要について学びました。
    同社 施設管理グループ リーダー 門田 悟史(かどた さとし) 氏からは、流氷の海から森へとつながる生態系ネットワークが評価され、環境省の「自然共生サイト」に認定された取組み、また敷地内の天然ビオトープ・クマゲラ(国の天然記念物に指定されている希少な野鳥)食痕エリアでの生物多様性保全に関する説明をいただき理解を深めました。
    また、エスペックミック株式会社 環境企画推進部長 吉野 知明(よしの ともあき)氏からは、生態系調査の取組みと現地に生息している貴重な植物について説明をいただき、地域の自然環境と調和した事業活動の大切さについて理解を深めました。
    続いて、株式会社デンソー 研究開発部 担当次長 谷 恵亮(たに けいすけ)氏からは、走行しながら電力を受け取ることができる次世代EV社会基盤である「走行中無線給電」の取組みについて、株式会社NIPPO様のご支援とご協力のもと、実際のテストコースにて、脱炭素社会の実現に向けた技術開発の現状や将来展望を説明いただき、環境と技術を融合させた先進的な取組みについて学びました。

    <クマゲラ食痕現場>
    <クマゲラ模型(実物大)>
    <天然ビオトープ>
    <生態系調査>
    <走行中無線給電 工事現場>
    <集合写真>

  5. 野村興産株式会社

    野村興産株式会社イトムカ鉱業所では、国内唯一の水銀リサイクル事業について、野村興産株式会社 札幌営業所 所長の今泉 元宏(いまいずみ もとひろ)氏等よりご説明を頂きました。
    全国の自治体や企業から回収された蛍光灯や乾電池等の水銀含有廃棄物の処理、水銀の回収から再資源化、最終処分に至るまでの一貫した処理プロセスや、安全かつ適正な管理体制について学びました。
    続いて、水銀の再資源化設備や処理施設をご案内いただき、有害物質の適正処理と資源循環を両立する取組みについて学びました。
    また、水銀による環境汚染防止を目的とした「水俣条約」をはじめとする国際的な規制への対応や、資源循環を支える社会インフラとしての役割についてご説明いただきました。
    視察を通じて、有害物質の適正管理と環境保全に貢献する最先端の取組みを実際に確認し、循環型社会の実現に向けた重要性について理解を深めました。

    <座学風景>

    <水銀リサイクル施設>

    <集合写真>

  6. 卯原内サンゴ草群落

    能取湖(のとろこ)の南岸に広がる卯原内サンゴ草群落を訪れ、サンゴ草(アッケシソウ)を視察調査しました。
    サンゴ草は塩性湿地に生育する希少な植物であり、環境省レッドデータブックでは絶滅危惧種(EN)に指定されています。現地では、サンゴ草が生育する湿地環境を観察しながら、生物多様性保全の重要性について理解を深めました。

    <集合写真>
    <偶然遭遇したオジロワシ>
    <サンゴ草>

《視察調査を終えて》

2026年度EPOC視察調査は、「生態系保全・脱炭素・資源循環」をテーマに企画しました。今回の学びは、これら「すべてはつながっている」ということでした。流氷と川が栄養を循環させる「海と森」。ルールが共生を可能にする「人と自然」。現場の技術が社会を変える「企業と技術」。自然資本は経営の土台となる「環境と経営」。生態系保全(流氷/知床/自然共生サイト/サンゴ草)、脱炭素(中部国際空港/走行中無線給電)、循環経済(中部国際空港、野村興産イトムカ)について、見て、感じて、持ち帰る「自然と産業の共生を考えさせられる」視察調査だったのではないかと思います。
今回の視察を通じて、生態系保全、脱炭素、資源循環の各テーマが相互に関係しながら持続可能な社会の実現に貢献していることを実感いただけ、また、地域の自然環境と産業活動、さらには最先端技術がどのように調和・発展していくべきかについて多くの学びを、是非各社内へ展開頂けましたら幸いです。
最後になりますが、EPOC視察団を快く受け入れてくださり、丁寧なご説明とご対応をいただいた視察先の皆様に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。