視察・調査

EPOC視察会(企画活動)「浜岡原子力発電所視察会」報告

《概要》

日時: 2025年5月26日(月曜日)13:00-16:20
目的: EPOCでは、環境分野・エネルギー分野における先進技術や取組みについて、調査・研究を進めています。2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、特定の電源や燃料源に過度に依存しない電源構成を目指すとともに、脱炭素電源を最大限活用することが示されました。今回、わが国のエネルギー供給について考える機会を提供することを目的に、浜岡原子力発電所の防波壁をはじめとする津波・地震対策等の安全向上対策に関する視察会を企画・開催しました。
視察先:
中部電力株式会社 浜岡原子力発電所
中部電力株式会社 浜岡原子力発電所
出典:中部電力HP
参加者: 28名

スケジュール

【原子力館】
  • 概要説明
  • 展望台
  • 原子炉実物大模型など
【発電所構内】 安全向上対策
  • 津波対策 防波壁
  • 浸水防止対策 原子炉建屋強化扉 溢水防止壁など
  • 緊急時対策 ガスタービン発電機建屋 緊急時淡水貯槽 緊急時対策所など
  • 5号機建屋内 中央制御室 原子炉建屋最上階
  • 研修センター 失敗に学ぶ回廊(技術伝承施設)
【原子力館】
  • 質疑

《視察概要》

【原子力館】

浜岡原子力発電所の建設経緯、わが国のエネルギー政策に関する基本方針(S(safety)+3E(energy security, economic efficiency, environment))、「第7次エネルギー基本計画」における原子力発電の位置付け、安全協定、浜岡原子力発電所の特徴等について講義を受けた後、原子力館に展示されている「実物大原子炉模型」・「実物大防波壁模型」・「実物大燃料集合体」について説明いただいた他、シースルーのエレベーターで展望台に上がり、発電所や遠州灘、隣接する御前崎風力発電所を一望しました。

原子力館
原子力館
講義
講 義
燃料集合体実物大模型
燃料集合体実物大模型

原子炉実物大模型
【発電所構内】

安全向上対策

・津波対策 防波壁

津波による海水の発電所敷地内への浸水を防ぐために、海抜22m(総延長約1.6km)の防波壁が設置されています。

出典:中部電力HP

・浸水防止対策

トンネルで海とつながっている取水炉から海水を流入させないように、取水槽の周囲に高さ約4mの溢水(いっすい)防止壁が設置されています。

出典:中部電力HP

・原子炉建屋強化扉

津波が防波壁を越えた場合でも、原子炉建屋内への浸水を防ぐために、防水扉の水密扉への取替と、強化扉の新設による二重化などにより、建屋の耐圧・防水構造を強化されています。

出典:中部電力HP

・緊急時対策 ガスタービン発電機建屋 緊急時淡水貯槽 緊急時対策所など

万が一、福島第一原子力発電所と同様に原子炉を冷却する機能がなくなってしまった場合にも対応できるように、ガスタービン発電機、電源車、可搬型の注水ポンプ、緊急時淡水貯水槽、などの設備を保有するとともに、対応訓練を実施されているとのことです。

出典:中部電力HP

・5号機建屋内 中央制御室 原子炉建屋最上階

普段は立ち入ることができない5号機建屋内に入り、ガラス窓越しに中央制御室と5号機原子炉建屋最上階を見学しました。

出典:中部電力HPより作成

・研修センター 失敗に学ぶ回廊(技術伝承施設)

浜岡原子力発電所で、過去に経験した事故・トラブルから学んだ教訓、これまで蓄積してきたノウハウを技術伝承することを目的に「失敗に学ぶ回廊」を研修センター内に設置し、研修に活用されているとのことで、事故・トラブル概要を示すパネルや模型などが展示されていました。

出典:中部電力HP

《視察を終えて》

わが国はエネルギー資源の大部分を海外からの輸入に依存しています。このため、ロシアとウクライナの戦争、イスラエルによるガザ地区侵攻など国際情勢の緊迫化によって、エネルギーの安定供給、エネルギー価格が大きく影響を受けます。また、気候変動、生物多様性、汚染(大気、水質、廃棄物など)といった環境問題への取り組みも喫緊の課題です。
 わが国のエネルギー政策における基本的な考え方(S+3E)に照らしてみても、これらの課題を解決することが可能な特定の電源というものは、残念ながらありません。火力・原子力・水力・太陽光・風力など、さまざまな電源の特徴を理解・把握して、各種電源を組み合わせてこれらの課題解決に取り組んでいかなければなりません。
 今回の視察では、浜岡原子力発電所の安全性向上対策を中心に説明をいただきました。さまざまな事象を想定し、何重もの設備対策を行われていること、そのうえで、万が一の事態が起きた際の対応訓練を昼間だけでなく夜間も、定期的に繰り返し実施されていることなどをお聞きしました。原子力館での質疑の終わりに、説明・対応をしてくださった浜岡原子力発電所の方が「私たちがどういうことを考え、何をしているのかということをきちんとお伝えしてご理解していただきたい。そこから対話が始まる。」という趣旨のことを話されたことが、印象に残りました。
 最後になりますが、EPOC視察会を快く受け入れてくださり、真摯な姿勢で現場における説明や私どもの質問に丁寧にご回答くださった浜岡原子力発電所のみなさまに、この場をお借りして御礼申し上げます。