視察・調査

EPOC視察(企画活動)福島方面視察会「環境・エネルギー関連の取り組み調査」報告書

概要

日時: 2018年12月4日(火曜日)〜12月5日(水曜日)
目的: 国と福島県が推し進める「福島イノベーション・コースト構想」に基づき、東日本大震災を乗り越えて、福島県浜通り地域に新たな産業基盤の構築を目指す取り組みの中から、そうまIHIグリーンエネルギーセンター、南相馬ソーラー・アグリパーク、福島第一原子力発電所、Jヴィレッジを視察し、同地域の復興について、環境・エネルギーの側面から理解を深める。
視察先: 1. 株式会社IHI そうまIHIグリーンエネルギーセンター様
2. 一般社団法人あすびと福島 南相馬ソーラー・アグリパーク様
3. 東京電力ホールディングス株式会社 福島第一原子力発電所様
4. 株式会社Jヴィレッジ様
参加者: 22名

各施設の見学内容


  • 1.株式会社IHI そうまIHIグリーンエネルギーセンター様

    そうまIHIグリーンエネルギーセンターは、再生可能エネルギーの地産地消の実現と地域主導の新たな自律事業モデルの創出により、被災地域の振興・発展に寄与することを目的として2018年4月に完成した施設です。今回は、同センターが取り組んでいる「水素を活用したCO2フリーの循環型地域社会創り」の稼働設備を実際に視察させていただきました。
    最初に地域エネルギーマネジメント管理棟において、概要等をご説明いただいた後、敷地面積約54,000uのセンター内に設置された太陽光発電設備や蓄電池設備、水電解装置・水素貯蔵タンク・燃料電池などを見学しました。太陽光余剰電力を活用した水素製造システムや生成した熱を利用した汚泥乾燥などの技術開発、さらに水素先進利用研究への取り組みや地域への貢献などについて伺うことができました。


    概要説明の様子

    施設管理棟前での集合写真
  • 2.一般社団法人あすびと福島 南相馬ソーラー・アグリパーク様

    南相馬ソーラー・アグリパークは、津波被災地(市有地)を活用し、太陽光発電所などを舞台とした体験学習を通して地元の子供たちの成長を支援し、全国の人々と交流を行う復興拠点として運営されている施設です。
    最初に、地元の小中学校が総合学習の授業に取り入れている体験学習について、一部を実地体験させていただきました。その後、センターハウスに移動し、あすびと福島様による福島復興を担う人材の育成に関する取り組みについてご説明いただきました。小中学生に対しては、自然エネルギーに関わる体験学習を通して自ら考え、発表し、行動する力を育むことを目指しており、さらに高校生や大学生に対しては、社会的事業を企画・立案し、実践経験を通して成長を促す仕組みも整えて、運営しているとのことでした。長期的な復興を支えるため、福島の明日を創る若い人材を育成することの重要性について、熱意溢れるお話を伺うことができました。


    太陽光パネルを用いた発電研究体験

    代表の半谷氏による取り組み説明
  • 3.東京電力ホールディングス株式会社 福島第一原子力発電所様

    2011年3月11日に発生した三陸沖を震源とするM9.0の大地震と、直後の津波被害により発生した福島第一原子力発電所事故を受けて、同発電所の原子炉1号機から4号機までの廃炉プロジェクトが進められています。今回、数千人規模の作業員による廃炉作業と福島第一原子力発電所の現状について理解を深めるべく、現地を視察させていただきました。
    最初に11月30日に開館したばかりの廃炉資料館において視察の概要等をご説明頂いた後、発電所に移動しました。 発電所内においては、バスに乗車し、路面舗装や法面モルタル吹付等の地道な措置の積み重ねにより放射線量を低下させた1号機から4号機のすぐ近くまで接近して、作業状況を視察することができました。
    原子炉は、号機毎に適した技術的措置が取られており、事故発生直後とは見た目も大きく様変わりしていました。また、汚染水について、凍土壁による地下水流入防止措置等により、当初よりも発生量が大きく抑えられていることも、現地設備を見ながらご説明いただきました。
    事務棟には食堂も開設され、温かい食事が供されており、作業員の皆さんの表情も明るく感じました。現地視察後、廃炉資料館に戻り、福島復興本社の取り組みについてご説明いただきました。廃炉作業に向けた道のりの長さを実感する一方で、復興に向けた取り組みが着実に進められている実態を理解することができました。


    現在の原子炉3号機の外観

    構内バスにおける説明光景
  • 4.株式会社Jヴィレッジ様

    Jヴィレッジは、1997年に日本初のサッカーナショナルトレーニングセンターとして開設され、W杯サッカー日本代表のトレーニングキャンプをはじめ多くのチームに利用されてきました。しかし2011年3月以降、Jヴィレッジは福島第一原子力発電所事故の収束に向けた対応拠点となり、営業を休止していましたが、ようやく本年夏から営業が再開され、ホテル棟や全天候型練習場が新設される等、復興に向けて動き出しています。今回はその最新現況を視察させていただきました。
    最初にセンター棟のコンベンションホールにおいて、Jヴィレッジの概要と復興に向けた取り組みについてご解説いただきました。その後、上階のテラスに出てピッチの全景を視察しました。芝は青々としており、かつて作業員の宿泊施設が設置され、駐車場として拠点になっていた頃の姿は想像できない光景に戻っていました。またバス中より、全天候型練習場や、常磐線Jヴィレッジ新駅の工事状況も見ることができました。


    テラスより天然芝ピッチを望む

    センター棟前での集合写真

視察を終えて

今回の視察では、東日本大震災を乗り越えて福島県浜通り地区に新たな産業基盤を構築し、未来を担う人材を育成する取り組みについて理解を深めるべく、IHI様には、そうまIHIグリーンエネルギーセンターを、あすびと福島様には、南相馬ソーラー・アグリパークへの訪問を受け入れていただきました。また、東京電力様には震災による原子力事故の現場となった福島第一原子力発電所を、Jヴィレッジ様には事故後、対応拠点として活用され、最近営業を再開したばかりのJヴィレッジ施設を視察させていただきました。現地において事業に携わられる方々から直接お話を伺い、また自らの目で見て感じることを通して、福島地域の復興進捗に関する知見を広めることができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。視察団を快く受け入れて頂いた各視察先様には、この場をお借りして深く御礼を申し上げます。

EPOC会長会社事務局(東海旅客鉄道(株) 総合技術本部 技術開発部)