視察・調査

2018年度 生物多様性保全の先進的取組み企業の視察

はじめに

COP10名古屋開催から8年が経過し、生物多様性の主流化・愛知目標の達成に向けた自主的な取り組みが求められる中、当分科会では、年間を通じてメンバーを対象とした研究会を行い、産官民のいろいろな取り組みについて学んでいます。

今回は、静岡地域の先進企業を訪ねて、ビオトープを通じた生物多様性保全活動の取り組みや企業グループで展開する生物多様性保全活動の取組みについての視察を企画しました。

開催日時: 2018年9月27日(木曜日)
見学先: (1)住友ベークライト株式会社 静岡工場
(2)ヤマハ発動機株式会社 本社コミュニケーションプラザ
(3)ヤマハ発動機株式会社 袋井工場
参加者: 37名


  • 住友ベークライト株式会社 静岡工場


    住友ベークライト株式会社は、事業活動(プラスティック製造)において原材料の調達、水・エネルギーの供給を自然の恵みから受け、一方で廃棄物や化学物質、CO2の排出、廃水などにより直接・間接的に自然環境に影響を与えていることを認識し、生物多様性の保全に取り組んでいます。

    静岡工場の敷地内にビオトープ「憩いの杜」を設置し、「大賀ハス」をはじめ、静岡県絶滅危惧種指定の「ミナミメダカ」や、虹色に輝く羽をもつ「ヤマトタマムシ」、青くきれいな「カワセミ」、秋の七草である「オミナエシ」や「フジバカマ」、「ナデシコ」など、昔から志太平野に生息していた多様な動植物が生息・生育できる環境を保全しています。ヤマトタマムシの個体数を維持、増加させるため、エノキを植栽したり、カワセミの営巣用の土手を整備したり、対象ごとに目標を明確にした保全活動を実施しています。



    【参加者の感想】
    ・緑と水の圧倒的なボリュームがあると色々な展開ができるなとうらやましく思いました。
    ・担当の方が良く勉強をされており継続的に活動や生き物の増加に心掛けているところがすばらしいと感じた。
    ・毎日大量に出る排水の利用方法の良い事例と思う。
    ・見た目の完成度ではなくカワセミやカブトムシ、生き物が住みやすい環境整備がしっかりできていた。

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    ヤマハ発動機株式会社 本社コミュニケーションプラザ

    ヤマハ発動機株式会社本社コミュニケーションプラザにおいて、ヤマハ発動機グループにおける生物多様性の取り組みについて詳細にご紹介いただきました。

    ヤマハ発動機グループは、「地球にやさしい知的技術で貢献します」、「地球環境との調和に配慮した取り組みを推進します」、「環境コミュニケーションと情報公開に努めます」の3つの宣言のもと、生物多様性の保全、エコマインドの醸成、情報の公開に努めています。「ヤマハ発動機生物多様性基本取り組み姿勢」は、こうした考え方を整理したものですが、こうした取り組みに当たり、EPOC自然共生社会分科会が2013年に作成した「生物多様性ライフサイクル別事例集」をバイブルとしているそうです。代表的な活動を以下に列記します。


    〜アカウミガメの保全〜
    アカウミガメが産卵に訪れる遠州灘海岸で、従業員とその家族・友人によるボランティア清掃を1991年から継続して実施しています。また浜松市主催の清掃活動にもボランティア参加しています。


    〜カワラハンミョウ〜
    砂丘に生息している絶滅危惧種の甲虫(カワラハンミョウ)の生息環境を守るため、外来植物種の駆除を行っています。


    〜身近な自然を守る〜
    浜名湖の自然を守るため、マリン事業部社員などにより、水上オートバイやボートなどを活用し、陸からは行けない湖岸へも上陸し、流れ着いたごみの回収などの清掃活動を年2回、継続開催しています。ヤマハ発動機ならではの機動力を生かし、第10回目の活動で浜名湖湖岸114kmをほぼ一周し、累計で2tを越えるゴミを回収し適正な処理をいたしました。


    〜里山作り〜
    ヤマハマリーナ浜名湖に隣接した浜名湖の景観の一部ともなっている丘陵地で、自然の放置により荒れた竹薮を再生し、美しい竹林化を目指した里山づくりの活動を社員のボランティアで実施しています。



    【参加者の感想】
    ・従業員が家族ぐるみで参加しているところがよい。
    ・自主参加ベースの活動が継続していることを見習いたいと感じた。
    ・EPOCの事例集をバイブルに、できることや足らないことを探し出すという熱意や工夫がすばらしいと思いました。
    ・里山の竹林整備など環境に対して多大な労力を割いていることに感動しました。
    ・グローバル企業としてSDGs、グローバルコンパクト、SBTiなど、いち早くリスクマネジメントに取り上げている点と、地域でのボランティア活動も地道に継続している点に感心しました。

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    ヤマハ発動機株式会社 袋井工場

    ヤマハ発動機株式会社袋井工場は、経済産業省などが工場内外の環境向上に顕著な功績があった企業を表彰する緑化優良工場で、2017年度に経済産業大臣賞を受賞しました。

    袋井工場の敷地面積の42%が緑地でその60%に自然林を残しており計画的な緑化を推進しているなどが認められたものです。今後もさらなる緑化と地域貢献活動を推進し、地域社会の模範となる工場を目指しています。

    工場内には渡り鳥の飛来地である調整池があります。その他ウォーキングコースが整備され、従業員の中にはボランタリーに花壇を作り、それを維持管理している人もいます。



    【参加者の感想】
    ・従業員の意識が高く、皆で工場をきれいにしようとの思いが緑化の維持につながっていると感じた。
    ・自然林を上手く活かした工場立地のあり方が参考になりました。
    ・従業員で守り、育くんできた工場緑地であることを説明していただいた社員の方達からひしひしと伝わってきた(愛着をとても感じました)
    ・緑地の6割が自然林であり、花壇(従業員管理)や調整池での自然を保つ活動、自然林を活用したウォーキングコースの整備等により緑化の取り組みが従業員に浸透していると感じた。
    ・自然のまま手を加えていない部分と、植樹など手を入れている部分で分かれていたものの不思議と一体感があり、働きやすそうな環境だと感じた。