視察・調査

EPOC視察(企画活動)「屋久島・宮崎方面環境・エネルギーの取り組み視察」

概要

日 時: 2017年11月7日(火曜日)〜11月8日(水曜日)
目 的: 屋久島は豊かな自然を保持しており、1993年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。本視察では、屋久島での森林生態系の保全活動を調査するとともに屋久島の島内電力供給において発送電を担う屋久島電工様の視察と宮崎県で焼酎粕のリサイクルとバイオガス発電を行う霧島酒造様のリサイクルプラントを視察し、多様な環境・エネルギーの取り組みについての理解を深める。
視察先: 1.九州森林管理局 屋久島森林生態系保全センター様
2.屋久島電工株式会社様
3.ヤクスギランド【屋久島自然休養林(荒川地区)】
4.霧島酒造株式会社様
参加者: 18名(企画調整委員会メンバー会社)

各施設の見学内容


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    1.九州森林管理局 屋久島森林生態系保全センター様


    屋久島森林生態系保全センター様は、林野庁九州管理局下にある組織で、世界遺産に登録されている屋久島の貴重な森林生態系の適切な保全と利用を図るため、様々な業務を行っています。
    屋久島は周囲130kmに1,000m以上の山が連なる山岳島で、優れた自然景観と特異な生態系を持ち、森林生態系の垂直分布は世界で高く評価すべきものであり、将来にわたって維持するための様々なモニタリング調査を行っています。
    また、外来種対策として島内に急速に拡大する外来種のアブラギリはスギの初期の成長に影響を与えるとして駆除や、ヤクシカについては、その増加とともに増える新芽食害や樹皮剥ぎなどの被害を食い止めるための捕獲対策など、生態系の保全管理も行っています。
    当日は、古市保全センター所長から世界自然遺産地域を適正に保全していくため、関係機関(環境省、林野庁、鹿児島県、屋久島町)と連携を図りながら増加する外国人入場者への対応など、様々なセンターの取り組みについてお話を伺い、世界遺産「屋久島」の自然環境保全への理解を深めました。

    概要説明の様子/屋久島独特の植生物写真説明の様子

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    2.屋久島電工株式会社様


    屋久島には、九州一の高峰宮之浦岳(1,936m)などの主峰の山々が連なっています。このため黒潮による温暖多湿の海風が上昇気流となり世界でも屈指の降雨をもたらして豊かな森林が水源涵養し、平均標高600mと高度差が得やすい地形となっています。
    屋久島電工株式会社様は、こうした恵まれた水力資源を利用した発電事業により、炭化ケイ素製品の製造と島民への電力供給(特定供給)を行っています。
    また、屋久島では屋久島電工で発電した電気を屋久島電工と九州電力と3電気事業組合が分担して民生用に配電しており、従前から日本で唯一の発送電分離の形式をとってきました。
    発電設備は、地理的に落差の得やすい安房川水系を開発し、3か所の水力発電所(最大58,500kW)と渇水時用に3機の火力発電所24,000kW(内燃機関)の設備を有します。
    当日は、最大規模の安房川第二発電所(出力34,000kW)を訪問し、設立経緯など概要説明の後、地下170mにある水力発電設備が稼働する様子を間近で見学し、島内の電力安定供給への取り組みについて理解を深めました。

    水力発電設備の見学/地下170mから地上へ移動の様子

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    3.ヤクスギランド【屋久島自然休養林(荒川地区)】

    ヤクスギランドは、標高1,000〜1,300mに広がる自然休養林で、面積270haの広大な森に4つのコースを設定し、興味や体力に合わせて楽しむことができます。
    当日は、50分コースを現地ガイドによる案内で「千年杉」や「仏陀杉」など強い生命力のヤクスギ本来の森の姿や、全てを覆いつくす緑豊かな苔、四季を通じてさまざまな表情を見せてくれる植物の数々、森を駆け抜ける清らかな小川やせせらぎなど、屋久島の悠久の大自然を体感しました。

    現地ガイドによる案内の様子/「仏陀杉」での集合写真

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    4.霧島酒造株式会社様


    霧島酒造様では、芋焼酎メーカーが抱える大きな課題である焼酎の製造過程で生じる焼酎粕の処理(廃液処理)について、2012年4月からは法律により必須となっていますが、2003年からいち早く自社で処理、対応を行ってきました。
    焼酎粕とは、発酵した焼酎もろみを蒸留した後に残った残渣物で、芋焼酎の場合、焼酎の約2倍量が排出され、水分を約95%含んでいます。
    霧島酒造様では1日に焼酎粕約650トン、芋くず約10トンが製造工程において排出されますが、これを24時間稼働するリサイクルプラントでメタン発酵をして約12,000世帯分相当のエネルギー(電力)を生み出せるバイオガスを生成し、焼酎製造工程の蒸気ボイラー燃料としての活用や、2014年9月からはバイオガス発電システムを設置し、「再生可能エネルギー固定価格買取制度」に基づき約2,000世帯分の電力を九州電力へ売電しています。また、メタン発酵後の残りは脱水をし、サツマイモ畑の堆肥として県内の畑地へと還元しており、ゼロエミッションを実現しています。
    当日は、国内最大級の焼酎粕リサイクルプラントによる「サツマイモ発電」の現場を見学し、環境への負荷を増やすことなくリサイクル事業を推進する取組みについて理解を深めました。

       

    概要説明の様子/発電設備の見学


視察を終えて

今回の視察では、屋久島は「1カ月のうち35日が雨」と言われるほど雨が多い島のとおり終日の雨でしたが、独特の自然豊かな生態系環境を維持・管理する様々な課題や取り組みについて理解を深めるとともに、自然環境保全の重要性について改めて実感することができました。また、島の自然を最大限に活かした水力発電事業や焼酎粕のリサイクルプラントの現場視察で得たものは多く、大変有意義な経験をすることができました。