視察・調査

2017年度 生物多様性保全の先進的取組み企業の視察

はじめに

愛知目標に基づく生物多様性の主流化及び持続可能な開発目標(SDGs)に向けて、多様な主体が取組を加速していくため、当分科会では、年間を通じてメンバーを対象とした研究会を行い、産官民のいろいろな取組みについて学んでいます。

今回は、生物多様性の保全活動に取り組んでいる企業、本業や製品に生物多様性保全活動を取り込んでいる企業などを対象として、食品産業における生物多様性保全活動への取り組みや、ラムサール条約湿地の藤前干潟における干潟生物の役割、有用性、湿地保護の重要性などについて視察を企画しました。

開催日時: 平成29年10月12日(木曜日)
見学先: (1)藤前活動センター
(2)味の素(株)東海事業所
(3)九鬼産業株式会社
参加者: 37名


  • (1)藤前活動センター(藤前干潟)


    藤前干潟は、名古屋港西南部の庄内川、新川と日光川の河口が合流する、名古屋市港区藤前地区の地先に広がる干潟です。

    かつて、名古屋市のごみ埋め立て予定地計画があった場所でしたが、伊勢湾に残る最後の大規模な干潟で、シギ・チドリ類を始め年間2万羽を超える渡り鳥の飛来地であり、2002年(平成14年)11月1日に国指定藤前干潟鳥獣保護区(集団渡来地)に指定、うち中心部分は特別保護地区に指定されました。

    さらに、同年11月18日にラムサール条約(「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」)に登録されました。

    現在は、干潟に飛来・生息する動物などの調査を引き続き実施しているほか、当地の重要性をわかりやすく見学できるよう、藤前活動センターでさまざまな展示を行い、教育の場としても活用されています。



    【参加者の感想】
    ・干潟の機能が海のメタボ対策になっていること など、その効果についてよく理解できた。
    ・館内に干潟の生き物を展示して、干潟の中でどういうことが起こっているのか見られるようになっているのは良い取り組みだと思った。

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    (2)味の素(株)東海事業所「味の素バードサンクチュアリ in 四日市」


    東海事業所では5,700m²の天然の池、及び周辺の緑地帯とともに貴重な「水辺の自然」を形成しており、トンボやチョウなど多種類の昆虫たちの繁殖地となっているほか、野鳥が多く生息し、渡り鳥の中継地にもなっています。

    愛知万博の開催を契機に、社会全体の環境意識の高まりと企業の環境に対する社会的役割の見直しの動きを踏まえ、味の素(株)東海事業所では、池を含む約13,000m²の緑地を「味の素バードサンクチュアリ in 四日市」として保全・整備していました。

    従業員の出入りを制限し、岸辺には人影をさえぎるための生垣を設置、鳥の羽を休める木の植樹を実施した結果、現在、1年に約38種類の野鳥が飛来し、サギの子育ての様子などが観察できます。

    企業による先進的な環境施策の具体例として、2003年に三重県環境功労賞、野生生物保護功労者表彰(環境省主催)を受賞、2012年には飛来するチュウサギの保護活動が「三重県生物多様性保護事業」に認定されました。



    【参加者の感想】
    ・企業敷地内での現実的な生物多様性保全活動の参考になった。
    ・最初に敷地内の池が貴重な自然の場と気づき、保全に務めた人、実施に取り組んだ企業の姿勢に感銘を受けました。

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    (3)九鬼産業株式会社


    九鬼産業(株)は、明治19年創業当時からごま油の製造に着手し、徹底した品質管理と、原料から油を抽出する際に薬剤を使わない圧搾法という製造技術によりごま本来の味・香りを大切にする製品づくりを実施しています。

    現在、日本で製造されるごま油に使用する原料のごまは、99.9%が海外からの輸入に依存していることから、九鬼産業(株)では、遊休農地等を活用した国産ごま栽培の試みを続け、国産ごまの安定供給を目指すことで、蝶々の舞うごま畑の拡大に努めると同時に、製造工程で大量に発生するごまの搾りカスを利用して有機肥料を作り農家に提供することで循環型リサイクルを達成されていました。


    【参加者の感想】
    ・国内産のごまの供給拡大と生物多様性の主流化の枠組みを生かして取組を拡大させていってほしいと感じました。