EPOC低炭素社会分科会
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日 時: | 2015年12月9日(水曜) 9時30分〜17時 |
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視察先: | 大成建設株式会社 技術センター ZEB実証棟(神奈川県横浜市戸塚区名瀬町344-1) アズビル株式会社 藤沢テクノセンター(神奈川県藤沢市川名1-12-2) Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(神奈川県藤沢市辻堂元町6-21-1) |
参加者: | 20名(EPOC会員) |
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1.大成建設株式会社 技術センター ZEB実証棟
技術センターZEB実証棟 スペック
敷地面積 :34,821.92u 建築面積 :427.57u 延床面積 :1,277.32u(3階建て) 免震ピット :14.27u 構造 :鉄筋コンクリート造(一部PC造)免震構造 電気設備 :高圧1回線受電・太陽光発電・小型ガスエンジン発電機 (1)T-ZEBシミュレーター
ZEBの計画・評価ツール。ZEBの計画・評価に、年間 エネルギー収支のデーターを反映させることで、従来より正確に短時間で計算することができる。立地や周辺建物等の影響を考慮した太陽光・風力地中熱等の創エネ量と、建物に様々な省エネルギー法を導入した場合の消費エネルギー量との収支を様々なパターンで検討できる。これにより計画建物のZEB化の検討や、建物の提案を容易に行えるようになった。
(2)タスク&アンビエント照明・空調制御システム
明るさセンサーが昼光による室内の照度を、次世代人検知センサーが在席状況を検知し、リアルタイムに適正に照度を調整(減灯・消灯)。人検知センサーで空調のパーソナル吹出口が自動開閉し、ムダなく空調する。このように快適性を保ちながら省エネを実現する。
(3)自然採光システム
壁面の窓に当たる自然光を、採光装置により導入し、白色天井面で拡散光として室内の明るさを向上させる「T-Light Cube」により、人工照明を減灯、照明用エネルギーを削減している。
(4)ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の提案
基準のビル(建築前のビル)に比べ、エネルギー消費量を100とした時の消費エネルギーの割合と、同じく創エネルギー量の割合により、ZEB ready(50%省エネビル相当)、nearly ZEB(75%省エネビル相当)、net ZEB(100%省エネビル相当)を提案する。太陽光発電や自然エネルギーの利用、高効率熱源機の採用、エネルギー管理などの技術提案を入れ設計し、ランニングコストの削減と、イニシャルコストの増加を考えて、検討・決定してもらう。
(5)VR(バーチヤル・リアリティ)&BIM(ビル・インフォメーション・モデリング)システム
幅4.2m、高さ2.4mの巨大なスクリーンでVRはバーチャルリアリティーの略。BIM(ビル・インフォメーション・モデリング)をPCに情報を取り込むことにより、空間の広がりと設備の配置などを3次元で見ることができ、専門家でなくても検討できる。当日は、調理実習室の配管や照明などの検討事例を見た。
(6)ボスポラス海峡横断鉄道トンネルプロジェクト(横断体感)
2013年10月に完成した大成建設の「ボスポラス海峡横断鉄道トンネルプロジェクト」で作った海峡横断鉄道をバーチャル体験する。海底トンネルは、アジア側とヨーロッパ側をまたぎ、トルコを分断してきたボスポラス海峡に設置されている。トンネルは、海底60mの速い潮流がある海峡中央部を「沈埋函(チンマイカン)」で結ぶ。バーチャル画面は、三次元で、まるで乗車しているようなリアリティーと高度な技術を再現する。
(7)建築に関係する環境関連法令の改定
建築物のエネルギー消費量は、現在、産業建築物が全体の1/3を占め、1990年比で133.5%に増加しており、他の部門に比べ省エネが進んでいない。そのため法が改正され、[1]建築基準法による確認申請で(従来から制定されていた防火・構造基準に加え)省エネが追加された(平成29年4月から)。[2]省エネの表示制度が追加された(平成28年4月から)。[3]省エネ制度に適合する建物は、容積率を緩和する制度ができた(平成28年4月から)。
(8)質疑応答
Q ZEB実証棟の建物本体、及びZEBに係る建設費について?
A ZEBを実現する為に新規開発技術も多く採用しており、開発技術のいくつかは、メーカとの共同開発であり、その部分は市場コストを算出することが出来ない。本建屋は、最先端の省エネ、創エネ性能を持つ建物を目指した実験棟であり、今後の市場性のあるZEBの普及に向け、コスト低減にも取り組んでいる。
Q T-ZEBシミュレーターにおいて、net ZEBとなる提案では、年間のランニングコストが、1,200万円削減できると説明されたが、償却期間はどの程度か?
A net ZEBで30〜40年、nearly ZEBで20年、ZEB readyで10年弱と算出しているが、現在は太陽光パネルが高価で、将来量産化による設備費用の削減やエネルギー価格の変化で、償却期間の短縮は期待できる。
Q 建物単体だけでなく、都市再生によるエネルギー融通等の研究はしているか?
A 技術センターでは、YSCPプロジェクトにおいて地域間でのエネルギー融通を実現するスマートコミュニティについて横浜市との共同の取り組みも行なっている。また、ビル単体のZEBが実現すると、エネルギーが余る季節や時間帯ができる。当然、周辺の建物を巻き込んだ、地域としてのエネルギー融通についても研究している。
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2.アズビル株式会社 藤沢テクノセンター
アズビル株式会社は、1906年に創業者が「計測とテクノロジー」で起業した山武商会。アズビルグループは現在次の100年を、「人を中心としたオートメーション」と位置づけ、計測と制御機器を製造販売する。
創業 1906年12月1日 人員 5210名(連結9408名)(2015.3.31.現在) 事業内容 1.アドバンスオートメーション事業 工場の安全、安心、生産性や品質向上などの製品やメンテナンスを提供する(工業事業) 2.ビルディングオートメーション事業 オフィスやホテル、ショッピングモールや病院、学校等へ省エネのノウハウとトータルソリューションを提供する(建物事業) 3.ライフオートメーション事業 毎日の生活をより良くするため、ガスや水道などのライフライン部品、家庭の空調システム、医薬品の製造装置をサポートする(地域に密着した事業) (1)テクノセンターの省エネ取組と事例現場見学
省エネを達成するため、エネルギーを供給する部門と使う部門の共通認識が重要と考えている。そのためには「見せる化」が重要。稼働日・非稼働日の違いや、部門別のエネルギー使用状況等をイントラネットを通じ「見える化」している。また月1回の「節電パトロール」実施や、空気圧の基準の低値化設定、デマンドと使用電力の社内公開、昼・夜間の照明用電力と消灯率、排水等の独自原単位の設定、屋上の空調用室外機の直列化、空調へ夜間電力による氷蓄熱の使用、照明とエアコンの連動による無人時の消し忘れ防止、等さまざまなアイデアを駆使している。
(2)現場見学コジェネレーション設備
・屋上に設置の「電気」「ガス」「排熱」利用のコジェネレーション設備
・トラブル時、設置業者がリアルタイムに対応するためのオンライン化
・空調負荷熱量と電気使用量から、ガス発電機の台数制御及び発電出力制御縦型ルーバー
ビルの壁面に設置された遮熱用ルーバー。ビルの太陽光照射による熱を遮熱する。
使用電力の見える化
他工場のデータを含め、電力の使用量と目標値を比較して観ることができる。これまで過去のデータであったが、気象データを反映させ明日の予測も表示される。これにより自分でアクションをとれるようになった。
(4)質疑応答
Q 省エネ活動において、効果の大きかった取り込みは何か?
A 社員の省エネ活動への喚起もあり、スイッチ付きコンセント600台を配布した。意識の高まりと金額(電気代)の効果が大きかった。
Q 省エネの「見える化」を積極的にされているが、苦労されたことは?
A 社員がイントラネットで省エネ活動を見えるようにした「見える化」は、非常に重要。最初反対意見もあり、スイッチ付きコンセントは普及しなかったが、「見える化」でその効果を感じてもらい、普及させることができた。無理な目標を押し付けるのではなく、時期によっては次の期の取組みまでの「思いやり期間」を実施している。職場環境は夏26℃、冬22℃で、無理なく快適な職場を目指している。
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3.Fujisawaサスティナブル・スマートタウン
(1)概要
Fujisawa SST(サスティナブル・スマートタウン)は、湘南海岸より2kmの場所にある、2014年11月27日にオープンしたスマートタウン。東日本大震災以降エネルギーという言葉は、2つの意味を持つようになった。一つは「生活インフラ」としてのエネルギー、もう一つは「人々が生きる活力」としてのエネルギー。Fujisawa SSTは「(この2つの)エネルギーのうまれる街」をコンセプトに、Panasonic藤沢工場跡地につくられた。Fujisawa SSTでは、コンセプト実現のため、CO2:70%削減、生活用水:30%以上削減、再生可能エネルギー利用率:30%以上、外部の供給が停止した場合でもライフラインの3日間確保を目標としている。運営は異業種19社からなる協議会。
敷地面積 :19ha(東京ドーム4個分) 戸建住宅 :600個 集合住宅 :400個 その他の施設 :健康福祉施設・商業施設 完成予定 :2018年度
(2)設置施設の例
・日照と安心を生む広い歩道
・住人を見守るカメラ、照明等のセキュリティー
・人や車の検知により照度UPする道路灯
・災害時に強いガス中圧導管
・距離400mに渡りソーラパネルを設置済み。
・街全体で3メガワットの太陽光発電を計画
・地中配管と、光回線による通信網
・ニーズに応じて適切に使用可能な電気自動車
・電動サイクルとバッテリーシェアリング
・個別分散型のHEMSが設置済みの住宅
・街全体のエネルギー情報の収集と可視化
・4重のセキュリティーにより、街を閉ざすことないセキュリティー確保
・街の情報やサービスに、ワンストップで繋がる情報サービス以上のようなサービスの説明を受けた後、タウン内見学時に実機を見学・体験した。
(3)質疑応答
Q タウンマネジメント会社の収入は?
A タウンマネジメントフィー、共有地域へ設置の太陽光パネルの売電収益、地下埋設の通信回線の賃貸収益や敷地の活用による不動産収益、ツアー実施等の収入
Q 非常時使用する蓄電池は共有のものか?
A 個別設置の太陽光パネルの発電を充電する、共有の蓄電池はない。非常時にも個々の蓄電池を使う。
(個別分散型・地産地消を掲げているので、各戸に蓄電池を設置している。また集会所の蓄電池は災害時に住人が利用出来る様になっている。)
Q 災害時の水の確保は?
A 各戸で飲料水・非常食を人数分備えている。また集会所には雨水を貯めるタンクがあり災害時にトイレ等に利用できるようになっている。
Q 入居に関して入居者へのルール説明は?
A 入居者に引き渡し時に時間を掛けてガイドラインの説明やタウンサービスのご案内を行っている。
Q 入居者に対して(安全)審査はあるのか。
A 街のコンセプトやガイドライン説明等により十分街の姿勢を理解していただいており、その後で入居を決定していただいているため、住民の安全審査を必要と感じていない。
Q 100年プランの節目ふしめにどこまで目標を達成するか、設定しているか?
A 現状2018年の街の完成時の目標を掲げており、達成度は見える化などで日々おこなっている。それ以降については、環境の変化にあわせて街のインフラやサービスも替わっていくと思うので適切なタイミングで新しい目標を設定することになると思う。
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