視察・調査

2013年度 循環型社会分科会視察調査

はじめに

地球環境保全への関心が高まる中、資源循環型社会の形成への期待も年々、膨らんできています。今回、循環型社会分科会では、先進的な技術により省エネ・省資源に貢献されている企業2社を訪問し、資源循環や環境負荷低減の優れた技術や取り組みについて、現場視察を交えてご紹介頂きました。見学会には多くのEPOC会員が参加され、循環(環境)ビジネスへのご理解をより一層深めて頂きました。

開催日時: 平成26年2月4日(火曜日)8時45分〜17時30分
見学先: 1.KTX株式会社
2.日本ウエストン株式会社
参加者: 26名

    •  

    1.KTX株式会社 (愛知県江南市)
    ★2013 愛知環境賞銀賞受賞
    「省エネ生産工法を実現する世界初の進化した電気鋳造金型」


    【概説】
    同社は、自動車、航空機、住宅設備、医療、レジャー関連の試作金型、量産金型、製品を取り扱い、独自の電気鋳造技術を強みとしておられ、世界で初めて開発したポーラス電鋳Rは、応用技術を含めて、国内外で数々の特許を取得しており、電気鋳造分野のリーディングカンパニーとして事業を展開しています。今回はポーラス電鋳Rの製造工程の説明と、今後ポーラス電鋳・凹引成形型と並んでグローバルに展開を進めたいMPM工法のご紹介と、そのために建設した新工場をご案内頂きました。


    【見学内容】
    はじめに、社長より同社の「会社概要」及び「電鋳金型の開発(特にポーラス電鋳金型の開発に至る経緯)」及び「製造工程」についてご説明頂きました。「ポーラス電鋳金型」は、金型の裏面に向かって広がる構造のミクロの通気工を持つ電鋳殻であり真空成型が可能となります。これにより、成形効率が大幅に向上し省エネルギー生産が実現しています。また 「MPM金型」は、急速加熱、冷却を可能にし、プラスティック製品の薄肉成形と高強度化を実現しています。この2つの金型の開発により、生産時間の短縮、コストダウン、軽量化、リサイクル、省エネすべてを実現することが可能となりました。特にMPM金型で生産されるプラスティック製品は薄肉成形や炭素繊維複合材料の成形で製品重量を減らすことを可能にし、ポーラス電鋳金型で生産されるプラスティック製品では製品の軽量化や省エネ生産を可能にし、成形サイクルの短縮や成形カロリーの削減と自動車の軽量化のダブルの効果でCO2を削減しています。
    その後、同社のショールームと工場をご案内頂きました。ショールームには、大手の自動車会社掲載用の車のインパネ製品等が展示されており、工場では、実際にインパネ部分の成型の製造工程を見学させて頂き、そのスピードの速さと原型の形状や模様の転写性における精度の高さを実感することができました。いずれも、社長が自ら丁寧にご案内下さいました上、見学者の質問にも丁寧に回答下さいました。

    概要説明/ショールーム

    •  

    2.日本ウエストン株式会社 岐阜工場(岐阜県岐阜市)
    ★2012年第2回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞受賞
    ★2013年経済産業省「おもてなし企業選」の認定
    「金属くずの付いた清掃用品ウエスの洗浄工程と仕上工程の見学」


    【概説】
    同社は高度なクリーニング技術で資源のリユースを推進し循環型社会の構築に大きく貢献されています。今回は工場で使用されているウエス・手袋類のリユースの流れを中心に見学させて頂きました。また、同社のグループ会社である社会福祉法人 静穂会 ひきえ事業所、石谷事業所も見学させて頂きました。


    【見学内容】
    はじめに、社長より同社の「会社概要」及びウエス・軍手等の洗濯の工程について実際の作業現場にて丁寧にご説明頂きました。その際、金属くず(キリコ)を含んだ使用済みのウエス、軍手等を可能な限りきれいに洗浄するため、洗剤や洗濯方法の研究をされたことや、顧客の要望にきめ細かく対応するため顧客単位での作業をされていることなどをご説明頂きました。
    その後、工場内の排水浄化プラントをご案内頂きました。洗浄施設の廃水処理システムでは微生物の力を借りたバイオ技術を応用した設備を導入し廃水汚泥ゼロを目標として、現在、オペレーション実施中であり、処理したリサイクル水は、洗濯水として再利用し資源の有効活用をしている旨をご説明頂きました。

    工場内設備/排水処理場

    排水処理場の見学後は同社のグループ会社である社会福祉法人静穂会 ひきえ事業所をご案内頂きました。こちらではウエス・軍手等の洗濯、乾燥、選別、たたみ、袋詰め等の作業が行われ、実際の工程についてご説明頂きました。その後、石谷事業所をご案内頂き、ドライクリーニングに伴う操作、梱包、及び金属探知機を使用しての金属くずのチェック等の作業工程についてご説明頂きました。洗濯後のウエス・手袋はリユース品とは思えないほど綺麗に仕上がっていました。
    また、同事業所では名入りの感動グッズ(ポエム、紙コースター、スリッパ、ウエルカムマット)の製造をしていらっしゃるとのことで、従業員の皆様方よりサプライズのおもてなしを頂き、その、ひとつひとつのあたたかい『おもてなし』に感動いたしました。2つの事業所にていきいきと働いていらっしゃる従業員の方を拝見し、同社の「雇用を通したバリアフリー社会」の実現を実感することができました。

    ひきえ事業所/石谷事業所

    •  

    いずれも、社長が自ら丁寧にご案内下さいました上、見学者の質問にも丁寧に回答下さいました。社長からは「机上だけでなく現場にてリユースできる資源がないか確認することが資源循環型社会の構築への貢献につながる可能性がある」とお話頂き、また、「焼却していたウエスをリユースすることで廃棄物の削減が可能になった上、焼却に伴う二酸化炭素の排出がなくなった」という環境負荷の削減例をご紹介頂きました。
    今回の視察を通して、資源循環型社会の構築には、上記2社のような高い技術力とトップの強い想いが必要であると認識しました。また、同時に多くの人々が資源循環について高い意識を持つことが重要であるとも認識致しました。