視察・調査

2012年度 生物多様性保全地域・企業の視察

はじめに

生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が愛知・名古屋で開催されて2年が経ちました。今年6月のRio+20でグリーンエコノミーが議論され、また10月にはインドのハイデラバードにてCOP11が開催されるなど、ますます生物多様性への取組みに関心が高まってきています。そこで当分科会では今回、日本における代表的な自然保全地である琵琶湖で生物多様性に取組んでいる企業などの視察を実施致しました。当日は、現地で保全に関わっている方からの取組みの紹介と合わせて活動現場の見学など貴重な体験ができ、一日を通して生物多様性に関する取組みについて学習することで生物多様性保全への理解をより一層深めていただくことが出来ました。

開催日時: 平成24年10月9日(火曜日)
見学先: 1.琵琶湖博物館
2.日本ガラストロニクス株式会社
3.株式会社ブリヂストン彦根工場
参加者: 32名

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    1.琵琶湖博物館見学 <滋賀県草津市>


    【概説】
    琵琶湖博物館は琵琶湖保全の中心的施設のひとつで、琵琶湖に対する総合的な理解を深め、湖と人間のよりよい共存関係を築いていくための展示内容が充実している施設です。
    最初に施設内のセミナー室にて学芸員の方に琵琶湖博物館の概要、生息する生物の生態系、企業と博物館を含む地域との連携、絶滅危惧種の保護などについて説明していただき、琵琶湖保全における博物館の位置付けや琵琶湖保全の取組みなどを学ぶことができました。その後、博物館を見学させて頂き、時間の関係で全てを見学することはできませんでしたが、展示物などを通じて琵琶湖保全の歴史や取組みの現状などを体感することが出来ました。


    参加者の方から以下のような感想をいだだきました
    「普段の生活において絶滅危惧種にあまり触れない私たちのような市民にも分かりやすく説明頂けた。」
    「個人的に再度訪問し見学したいと思いました。」
    「本日の視察をする上でのベースを学ぶことができた。」

    琵琶湖博物館内の視察

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    2.日本ガラストロニクス株式会社 <滋賀県草津市>


    【概説】
    日本ガラストロニクス株式会社は琵琶湖の豊富な水源を守る活動として地元企業11社と行政が連携した「湖南企業いきもの応援団」を立ち上げ、生物調査と環境保全活動を会社経営につなげた地道な活動を積極的に行っている会社です。
    最初に環境担当の方から「湖南企業いきもの応援団」の活動について、その経緯や今までの活動内容など詳しく説明をして頂きました。詳細な調査結果のデータなども説明頂き、活動に対する熱意が伝わってきました。また経営者からも取組みに対する熱い言葉を聞くことができ、会社全体で活動されていることが良く理解できました。
    取組みの説明を聞いた後、実際に活動を行っている近くの川(狼川)に徒歩で移動し、現場での活動を見学させて頂きました。現場では川の水質検査や川に生息している魚などを採取し、貴重なデータを収集していました。当日の活動には午前中に話を聞かせて頂いた琵琶湖博物館の学芸員の方も参加されており、連携して保全活動に取組んでおられました。
    現場での活動を実際に見ることができ貴重な体験をすることができたと思っています。


    参加者の方から以下のような感想をいだだきました
    「地域、各企業間と連携した活動が素晴らしい。」
    「地域、他企業との協業の様子を体感することができた。」
    「中小企業ながら環境への取組みが充実しており、トップの意思に感動した。」

    保全活動現場(狼川)の視察

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    3.株式会社ブリヂストン彦根工場 <滋賀県彦根市>


    【概説】
    株式会社ブリヂストンの彦根工場は「びわ湖生命の水プロジェクト」を展開し、自然観察会&工場内ビオトープでの絶滅危惧種繁殖に関する研究活動支援を行うなど琵琶湖の環境保全に取組んでいます。
    最初に株式会社ブリヂストンにおける環境への取組みについて担当の方から説明をしていただきました。環境宣言に述べられている3つの活動「自然と共生する」、「資源を大切に使う」、「CO2を減らす」についてそれぞれ製品における取組やモノづくりでの取組みなど丁寧に話をして頂きました。また、彦根工場における生物多様性への取組みについても説明して頂きました。
    その後、敷地の一部に造成されていますビオトープ(びわトープ)を見学させて頂きました。ここでは琵琶湖の絶滅危惧種である「カワバタモロコ」の繁殖を行っているとのことですが、このビオトープだけで約3,000匹のカワバタモロコが生育しているそうです。ここでも担当の方から丁寧な説明をして頂き、質問が多数でるなど時間が足らなくなるほど活発な意見交換ができたと思っております。


    参加者の方から以下のような感想をいだだきました
    「環境配慮製品と会社の環境方針をうまく結び付けられており、取組みが分かりやすかった。」
    「想像していたよりもビオトープは小さかったが従来の自然環境に近い植生づくりをされていた。」
    「ビオトープも地域を巻き込んで出来ており参考になりました。」

    びわトープの視察(カワバタモロコ採取)