視察・調査

EPOC低炭素社会分科会 「先進省エネ施設視察調査」

はじめに

低炭素社会分科会では、低炭素社会に向けた先進取り組み事例や革新技術の調査・研究を通じ、EPOC会員各社のレベルアップと相互交流ならびに連携の促進を図っています。 今回は、CO2排出削減に積極的に取り組む企業として、シャープ株式会社亀山工場と本田技研工業株式会社鈴鹿製作所を訪問し、環境への取り組みについてご紹介いただきました。


開催日時 平成23年2月8日(火曜)8時30分〜17時30分
見学先 [1]シャープ株式会社 亀山工場
[2]本田技研工業株式会社 鈴鹿製作所
参加者 43名

  • 1. シャープ株式会社 亀山工場(三重県亀山市白木町幸川464)
    <シャープ梶@亀山工場>            <環境取組み紹介>
    【概説】

    (1) スーパーグリーンファクトリー
    シャープ亀山工場は、液晶パネルから液晶テレビの組み立てまで一貫生産する世界初の画期的な垂直統合型工場である。一定水準の環境配慮性を備えた生産工場を「グリーンファクトリー(GF)」と定義し、10のコンセプト(温室効果ガス、エネルギー、廃棄物、資源、化学物質、大気・水・土壌、自然共生、地域共生、環境意識、情報開示)をもとに基本方針とノウハウを示したGFガイドラインを、国内は1999年度から、海外は2001年からすべての生産工場に導入している。国内では、亀山工場の建設を機に、極めて環境配慮性の高い生産工場を「スーパーグリーンファクトリー(SGF)」として、独自の評価基準のもとに社内認定する取組を2003年度から開始した。亀山工場はその第1号である。2009年度末現在、国内外合わせて38 の生産工場のうち、24工場がSGFを達成した。


    (2) 太陽光発電
    シャープは、太陽光発電について40年以上の歴史と実績をもち、7年連続生産量世界No.1である。自ら太陽光発電システムでエネルギーを作り出す「創エネ」を実践すべきと考え、亀山工場では一般家庭の約1,300軒相当分、5,210kWの太陽光発電を行っている。亀山工場の正面には、液晶テレビ「AQUOS」を模したデザインの採光型太陽電池モジュールが設置されており、「創エネ」と「省エネ」の融合を象徴している。


    (3) コジェネレーションシステム
    LNG(液化天然ガス)を用いて、第1工場は約12,000キロワット、第2工場は約28,000キロワット、合計約40,000キロワットを自家発電し、その際に発生する廃熱を冷暖房や給湯などに利用している。その供給量は工場全体の3分の1の電力を占める。火力発電によるエネルギー供給方法に比べてエネルギー利用効率が高く、CO2の排出量を大幅に削減している。またLNGは、ガス会社と直結したパイプライン(鈴鹿市から亀山市まで全長17キロメートル)で供給されるため、燃料輸送車の往復による排気ガスも発生していない。


    (4) 水資源
    液晶パネル工場ではマザーガラスの洗浄など製造工程に大量の水を必要とする。そこで亀山工場では製造工程排水を100%浄化するリサイクルシステムを導入し環境に配慮している。バイオ技術を利用した排水回収プラントを設置し、1日最大48,300トンを浄化し、再利用している。また、排水処理で悪臭が発生しないよう、北海道の石狩川で採れるピートモス(水苔が堆積して地中で炭化したもの)を利用した生物脱臭によりニオイを分解、水処理工程で発生する有機汚泥も減量化設備を導入し、排出量を抑制している。


    (5) 超電導電力貯蔵装置
    落雷などによる瞬間的な電圧の低下(瞬低)対策として、超電導コイルを-269℃に冷却し、コイルの電気抵抗をゼロにし、電気エネルギーを磁気エネルギーにして電力を貯蔵している。10,000キロワットの超電導電力貯蔵装置の導入により大電流を瞬時に出力し、電圧低下による影響を防ぐことができる。



  • 2. 本田技研工業株式会社 鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市平田町1907)
    <本田技研工業蒲骼ュ製作所>          <入り口にて参加者全員>
    【概説】

    (1) グリーンファクトリー活動
    鈴鹿製作所は1960年に、Hondaの国内3番目の工場として設立され、フィットやハイブリッドカーのインサイト等を生産している。高品質なクルマを造るため、鈴鹿製作所では高精度の最新鋭機械を随所に導入し、効率的な生産ラインで、エンジンから完成車にいたるまでの一貫した生産システムを整えている。また各工程において、Hondaの基本理念「人間尊重」に沿い、重量物の取り扱いや、難姿勢作業などをロボットに置き換えるなど、働きやすさを考えた工場となっている。 本田技研では、生産活動のあらゆる側面で地球環境への影響をミニマムにするよう努めている。そして、環境のさらなる改善や地域社会との共生に向けた取組みを行い、地域が誇れる工場のあるべき姿を目指し、「グリーンファクトリー計画」を推進している。
    鈴鹿製作所は、グローバルスタンダードラインとして北米や英国など世界のHondaの量産ラインの基準となっている。各工程における生産効果と柔軟性を一段と高め、市場の変化に迅速に対応している。グリーンファクトリー化によって、新機種開発時や増設時の初期投資が半減し、生産リードタイム(部品投入から完成車になる時間)を30%削減、最大8車種に対応できるフレキシビリティ、生産工程におけるCO2排出量20%低減を実現している。


    (2) ふるさとの森づくり
    本田技研では1976年より、事業所の周囲にコンクリートの壁の代わりに、その土地固有の樹木を植えて、本来の生態系を生かした自然を回復・維持するという、自然の仕組みに基づいた緑化活動「ふるさとの森」づくりを行っている。鈴鹿製作所では、外周に地元の樹種であるケヤキ、アラカシ、タブノキを10万本植栽している。
    また、敷地内にビオトープを整備しており、工場見学者に水の循環(海→雲→雨→川→ホンダ→川→海)を緑地で利用して見せることにより、循環型工場のあり方を示している。なお、排水処理施設で浄化した放流水の一部を利用している。


    (3) 排水処理施設
    鈴鹿製作所の排水を一括処理する排水処理施設(処理能力1,710トン/日)は、従来の設備を活かしながら最新の基準を遵守し、コストパフォーマンスに優れている。
    塗装工程からの排水は電着・被膜等で浄化し、工場内の排水の一括処理システムで一次処理(薬品)、二次処理(生物処理)、三次処理(活性炭処理)される。排水処理後の水は鈴鹿川に放流しており、BOD、窒素、リンを常時測定している。油の上澄みはリサイクルされている。