セミナー

「2022年度 自然共生分科会セミナー」報告


概 要

 EPOC自然共生分科会では、生物多様性と企業を取り巻く国内外の動向や、生物多様性に影響を及ぼしている環境負荷の低減に向けた取り組みなどについて、事例紹介や現地視察、勉強会などを行うことで、会員企業における取り組みの支援を目的に活動しています。
 今回は、生物多様性条約COP15で採択された「ポスト生物多様性枠組」など生物多様性に係わる動きや、これらを踏まえた企業としての取り組みについて、二人の講師より説明いただけるセミナーを企画しました。

開催日時 2023年1月16日(月曜日) 13時30分~16時25分
開催方式 会場開催(東邦ガス本社)+リモート開催(Zoom)
参加人数 76名(会場:28名+リモート:48名)

プログラム

(講演Ⅰ)
 「あいち名古屋から考えるポスト2020年目標 ~COP15の最新情報~」
 東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 森林風致計画学研究室 教授
 香坂 玲 氏


(講演Ⅱ)
 「自然共生に向けたブリヂストンの取り組み」
 株式会社ブリヂストン Gサステナビリティ統括部門 統括部門長
 稲継 明宏 氏


【講演Ⅰ】

「あいち名古屋から考えるポスト2020年目標 ~COP15の最新情報~」
東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 森林風致計画学研究室 教授  香坂 玲 氏

(講演概要)

 2022年12月に行われた「昆明・モントリオール国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」での成果や2030年に向けた方向性について、ご紹介いただきました。
 実際に現地入りされていた香坂先生からの臨場感あふれるお話から「どうやって世界レベルの枠組みがつくられていくのか」、「どのような点で各国間の意見に温度差があったのか」など、大変興味深く聞くことができました。また、最近重要視されている「ネイチャーポジティブ」について、最終的な採択の中には残りませんでしたが、良い方向に向かわせる保全活動は必要との相互理解が得られ、COP15の結果を各国が持ち帰り、それぞれの行動に移していくことになったとご説明いただきました。
 生物多様性とは、種や外来種だけでなく「つながり」、「関係性」、「食物連鎖」がキーであると改めて解説いただき、今回のCOP15で盛り込まれた「30by30」や「OECM」は国の取組みだけでは難しく、自治体や民間と連携していくことが必要であるため、「企業も市民もまずはやってみなはれ!」の言葉とともに、「各地域の特徴を生かした活動をしていきましょう」というメッセージをいただきました。

(質疑応答)

今後、環境省が民間企業に対して参加を促していくOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)の取組みで小さな活動でもよいのかという話を聞くことがありますが、面積など条件がありますか。
→  面積だけでの基準はなく動植物の把握や周辺との相乗効果など、生物多様性の価値があるか、それを守ることが担保されているか、といった観点で基準が設けられています。また、それぞれ保有しているビオトープや森林に地域の特徴などを加えていくと良いと考えます。
TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)では、受けるリスクだけでなく、与えるリスクへの言及も求められることから、自然共生を生業としない企業にとっては情報開示をしていくうえで、どこを目指すのか、どこまで投資をする必要があるかなどの判断が難しいと思いますが、今後、どのような論議がされていきますでしょうか。
→  COP15でテクニカルな論議がされたわけではないですが、SBTs for Nature、ISO331、IPBESなど、それぞれ動き出していく中で、具体的にどのように調和していくかは動きがパラレルなので難しいと見受けられます。様々な情報を得る中でタイミングをどう合わせていくかが大事と思います。

【講演Ⅱ】

「自然共生に向けたブリヂストンの取り組み」
株式会社ブリヂストン Gサステナビリティ統括部門 統括部門長  稲継 明宏 氏

(講演概要)

 サステナビリティ推進活動について、具体的な事例を示しながら様々な取組みをご紹介いただきました。
 初めに、グローバルサステナビリティ課題の推進として、活動が足りないのか、情報開示が足りないのかを層別にレビューし、施策へ反映していくという取組みをご紹介いただきました。
 次に、「自然と共生する」ために、「資源を大切に使う」技術を開発・活用しつつ「CO2を減らす」ことに誠実に取り組んでいくとの環境宣言を踏まえ、「生物多様性貢献活動推進プログラム」は世界中の拠点で実施している生物多様性貢献活動に対して、レベルアップを支援するツールとして運用されており、活動のガイドラインや評価基準・仕組みを決めて社内で顕彰するという活動について、ご説明いただきました。
 また、ネイチャーポジティブに向けた活動においては、持続可能な天然ゴムに向けた取組みとして、森林破壊をしないでゴムの木を増やしていくことなど、天然ゴム資源の拡充・多様化の取組みや、樹液の採取では人権問題も係わるため、サプライチェーンの透明性が求められていることなどを教えていただきました。
 気候変動と自然損失は相互に影響しており、TCFDとTNFDのシナリオ分析を一体的にとらえながら検討すること、また、環境問題だけでなく社会問題も含めて、サステナビリティ課題として広く捉える必要があるなど、大変勉強になりました。

(質疑応答)

生物多様性貢献活動推進プログラムについて、具体的なツールとしてはチェックリストの様なものがあって各拠点が自発的に回答するものでしょうか。また、チェック項目はどのように決められたのでしょうか。
→  エクセルで作ったフォーマットで、イベント実施有無や参加人数、保全している面積などを入力するものになっており、それを集計して評価をしています。チェック項目は、各地域の環境推進責任者が集まる会議体の下に生物多様性を議論するタスクフォースのような組織を設け、各地域の担当者が集まって決めています。
生息地保全面積という指標がありますが、どのようなものでしょうか。
→  決められた定義があるものではなく、例えば、アメリカでは広大な敷地面積の中で手付かずの自然保護地域を残している部分であるとか、国内ではビオトープを設置している面積など、それぞれの国や地域に合わせて、生物多様性や自然保護に貢献しているという場所を洗い出しています。
持続可能な天然ゴムに向けた取組みをするにはコストがかかるため、タイヤの価格に反映されると新興タイヤメーカーなどとの競争に影響すると思われますが、ESGの観点を踏まえる中で、社内ではどのように議論・判断されていますか。
→  自社農園や自社に近い農園を持ち、しっかりした対価を支払いながら、強いサプライチェーンを作ることがベースとなっています。業界全体でも議論を進めていますが、理想と現実の中で議論を深めています。天然ゴムのトレーサビリティについての問合せも増えてきていますので、コストについて社会状況と捉えてどう処理をしていくのか、コストを業界でどう配分していくのかを議論しています。

講演会場の様子 講演Ⅰ講師 香坂氏 講演Ⅱ講師 稲継氏