セミナー

2022年度 環境経営分科会
 第1回EPOC環境経営先進セミナー
 「サプライチェーンのCO2排出量の算定について」


概要

 現在、気候変動対策に関する情報開示・評価の国際的なイニシアティブ(CDP、RE100、SBT等)の影響力が高まっており、これらの動きに対応することが求められています。また、事業者のCO2の直接排出(Scope1)や電気などの使用に伴う間接排出(Scope2)だけでなく、それ以外の間接排出(Scope3)も加えたサプライチェーン全体のCO2排出量の算定や開示も重要さを増しています。これらの動向について、ウェイストボックス様・日本電気様にご講演頂きました。

開催日時 2022年9月16日(金) 14:00~17:05
開催方式 会場(マザックアートプラザ)
参加者 計648名(当日会場67名+見逃し配信581名)

<プログラム>

(講演Ⅰ)
 「最新のSCOPE3算定の手法について」
 株式会社ウェイストボックス 代表取締役
  鈴木 修一郎 氏

(講演Ⅱ)
 「サプライチェーンCO2排出量「見える化」へのアプローチ
    ~Green x Digital コンソーシアム見える化WG活動紹介~」
 Green x Digitalコンソーシアム 見える化WG主査
 (日本電気株式会社 サステナビリティ推進部 シニアプロフェッショナル)
  稲垣 孝一 氏


<概要>

(講演Ⅰ)
 企業のSCOPE1・2・3把握や、SBT・TCFD・RE100・CDP情報開示等の支援を初め、温室効果ガス把握の専門家として循環型社会や脱炭素化社会の構築に貢献されているウェイストボックスより、創業された鈴木修一郎様に基本的な内容をご講演頂きました。

初めに「カーボンマネジメントのサイクル」として以下を解説頂きました。

  • サイクルには、①現状把握(Scope1・2・3算定)、②目標設定(価額に整合した目標設定)、③削減の取組(経営に統合して推進)、④情報開示(Scope1・2・3、目標達成状況)が有る。
  • 現状把握…温室効果ガス算定の国際ルールや、Scope3の15のカテゴリ
  • 目標設定…SBT
  • 情報開示…TCFD、CDP
 次に「CO2排出量算定の概要」として、Scope1・2・3排出量算定のステップを以下解説頂きました。
  • Scope1・2・3排出量算定の流れ
    Ⅰ.目的の明確化…サプライチェーン排出量の全体像把握、削減対象の詳細評価等
    Ⅱ.算定対象範囲の設定…温室効果ガス、組織的範囲(自社、上流~下流)
    Ⅲ.カテゴリの抽出…算定対象範囲から除外するカテゴリの有無を確認し、算定方法を決定
    Ⅳ.カテゴリ内での特定…カテゴリ毎に算定対象とする範囲(バウンダリ)を特定
    Ⅴ.活動量の収集・算定…データ収集項目を整理・収集し、算定・集計
  • 環境省と経済産業省が策定した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に基づく、排出量算定の具体的手法(基本的内容)
    Scope1…温室効果ガスの直接排出
    Scope2…温室効果ガスの間接排出
    Scope3…上流(カテゴリ1~8)、下流(同9~15)毎
 最後に、Scope3の削減につき、活動量または排出係数を下げた事の可視化や、サプライヤーと連携し継続実施していく事をご説明頂きました。
講師の鈴木氏

(講演Ⅱ)
 一般社団法人電子情報技術協会(JEITA)が設立した「Green×Digitalコンソーシアム」のワーキンググループ(WG)に於いて、「見える化WG」で主査としてメンバ企業を束ねられている日本電気の稲垣孝一様に、グローバルでのサプライチェーン全体のカーボンニュートラルの要求に対し、デジタル技術を活用しサプライチェーン全体のCO2データを見える化するプラットフォーム(データ連携基盤)構築に向けた企業横断での取り組みをご紹介頂きました。

  1. サプライチェーンCO2排出量の見える化に関する動向
    • 国際的な温室効果ガスの排出量の目標に対し、企業が求められる算定と情報開示
    • NECグループのサプライチェーンCO2排出量削減に於いて、サプライヤと連携しての活動推進状況
  2. サプライチェーンCO2排出量の見える化における課題
    • Scope3のカテゴリ1(購入した製品・サービス)の場合、活動量×排出原単位の算出方法では調達額が減らなければ排出量が減らない→削減努力が反映されない。
    • コンソーシアム発足準備段階に企業からは、サプライチェーン排出量の正確な把握、国際的かつ異種システム間での相互運用性、データ開示・比較に対する懸念が課題として挙げられた。
  3. 見える化WGの取り組み
    • 組織体制や、メンバ企業(2022年8月22日時点102社)、オブザーバー等
    • 目指す姿は、サプライチェーン各プロセスでのCO2排出量の実績データがデータ共有基盤へ蓄積され、排出量の正確な把握。排出量削減に向けた企業間の協働の促進、製品・サービスの排出量(CFP)も共有基盤のデータから把握、消費者への開示を通じ、より排出量の少ない製品・サービス利用への行動変容の促進 等。
    • 2021年度の準備フェーズでは目指す姿に対し、参加メンバ意見を整理し、CO2の算定・収集方法、データの共有方法等を一次レポートにまとめた。
    • 2022年度の検討フェーズでは、準備フェーズの成果を踏まえ、テーマ毎にサブWGを組成し、具体的検討を進める。
      • ルール化検討SWG(GHGプロトコル、LCA/CFP等に詳しいメンバ)
      • データフォーマット・連携検討SWG(情報システム構築に詳しいメンバ)
      • その他(全WGメンバ)

 最後に、サプライチェーン全体のCO2見える化は、一部企業の取り組みだけでは難しく、グローバルサプライチェーンに参加するあらゆる組織が参加しなければ実現できない旨、及び見える化WGが作成したレポートを多くの方々にご覧頂き、活動への賛同と積極的な協力・参加を期待されている旨お話がございました。

講師の稲垣氏

以上