~ “ポスト愛知目標”の要求事項に対する理解と、連携・協働の検討 ~
はじめに
開催日時 |
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2021年12月3日(金曜日) |
形 式 |
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Web会議形式(Zoomウェビナー) |
主 催 |
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環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)自然共生分科会 |
講 師 |
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谷貝 雄三 氏
(環境省 自然環境局 自然環境計画課 生物多様性主流化室 室長)
原口 真 氏
(MS&ADインターリスク総研株式会社 フェロー
MS&ADインシュアランスグループホールディングス
サステナビリティ推進室TNFD専任SVP) |
参加者数 |
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245名(見逃し配信視聴含む) |
【セミナー開催の背景と内容・参加者の声】
今年度、EPOC自然共生分科会では、生物多様性/愛知目標の2050年ビジョン達成に向けた次期ミッションである“ポスト愛知目標”の立案状況を早期に把握し、企業活動に伴い発生する様々な影響やリスクの対応に繋げていくことをテーマに活動しています。
今回は、気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)で議論される「ポスト愛知目標」の概要や、生物多様性に関わる各種規制など最新の世界動向について、また、それに関わる企業活動への様々な影響と対応すべき点を学習し、今後の活動や課題解決に繋げていくことを目的として、セミナーを企画しました。
なお、本セミナーは新型コロナウイルスの蔓延もあり、Zoomを使った オンラインセミナーで開催しました。
講師には、環境省の谷貝雄三氏、MS&ADインターリスク総研株式会社の原口真氏をお招きし、谷貝氏からは「ポスト愛知目標の要求事項と生物多様性における世界の動向について」、原口氏からは「サステナブルな社会への移行の多様な要請に対する経営変革について」というタイトルにて、ご講演をいただきました。講演では、生物多様性・自然資本の考え方から始まり、企業活動とのつながり、これから求められることなどについて、二人の講師より詳しく説明をしていただきました。また、最後には、webで受け付けた参加者からの質問に対し、丁寧に回答をしていただきました。
参加者からは、「経営的な立場を意識していくための情報を得ることができた」「最新の状況で知らなかったこともあり、勉強になった」「聴講した内容を再度振り返り実務に生かしていきたい」といった意見をいただきました。
プログラム
14時00分~14時10分
開会挨拶
EPOC副幹事長
ブラザー工業株式会社
気候変動対応戦略部
部長 藤岡 昌也 氏
14時10分~15時10分
基調講演①
「ポスト愛知目標の要求事項と生物多様性における世界の動向について」
【講 師】
環境省 自然環境局
自然環境計画課 生物多様性主流化室
室長 谷貝 雄三 氏
【講演概要】
先ずは、生物多様性/自然資本とは何なのかという基礎的な部分を説明いただき、そこから企業活動と生物多様性/自然資本との関係、近年、生物多様性の喪失は世界のビジネスにとってのリスクとして上位にランキングしていることを教えていただきました。
次に生物多様性/自然資本を巡る主な国際動向について説明いただき、愛知目標の達成具合(評価)から、ポスト愛知目標となる昆明宣言の概要、CDPにおける生物多様性指標の追加、TNFDの設立など情報開示に対する世界動向について教えていただきました。
また、ポスト愛知目標の主要な目標として検討されている30by30とOECMについても説明いただき、これには法的な保護地域だけではなく、民間企業が保有する緑地などの協力が必要なことを教えていただきました。
加えて、ビジネスでの生物多様性主流化に向けた国内取組として環境省の民間参画ガイドラインや日本経団連などの取組を説明いただき、今後生物多様性/自然資本は企業が対応しないとリスクとなる恐れがあり、脱炭素・人権・経済安保等、サプライチェーン全体での管理・対応が強く求められ、バラバラに対応するのではなく、一体的に対応することが効率的であり、相乗効果が期待できることを教えていただきました。
15時10分~15時20分
質疑応答
- 脱炭素に向けた活動や、廃棄物削減活動を実施しているが、生物多様性のために、それ以上に何か新たにすることがあるのでしょうか?
→ OECMや30by30でいえば、工場の緑地など認定を受けてもらうことやサプライチェーンで見たときに原材料調達などに配慮することなどがあげられる。
- 水質に関して非常に配慮している工場があるとして、それがOECMに認定されるような可能性はあるのでしょうか?生物多様性保全に貢献しているという考えにはなるかとは思うのですが、いかがでしょう?
→ 土地ベースの認定で、生物多様性の保全の価値があるところに対する登録なので、水質に配慮しているだけでは認定はできない。それをベースに生物多様性保全を実施していれば、その活動を実施している方と協働で認定を受けることができる。
- 企業努力は促しつつ、実効性の高い施策としては、やはり行政による大きな介入なども必要と思いますが、お考えはいかがでしょうか?
→ 法規制はわかりやすいものだが万能ではない。企業が自主的に実施していることが国際基準に照らして恥ずかしくないものになる様に、基準を示さなければいけないと考えている。
そのためにデータ連携は必要だと感じており、国がハブとなり一定の基準や指標で生物多様性の保全を示さないといけないと考えている。データ連携は難しい部分があるので、そのネックを乗り越えないといけない。
15時20分~16時20分
基調講演②
「サステナブルな社会への移行の多様な要請に対する経営変革について」
【講 師】
MS&ADインターリスク総研株式会社 フェロー
MS&ADインシュアランスグループホールディングス
サステナビリティ推進室TNFD専任SVP
原口 真 氏
【講演概要】
2030アジェンダのテーマは「SX(サステナブルな社会への移行)」であり、民間セクターが主役となる現状のやり方では世界を持続可能にはできない。よって、「できることから」ではなく根本的に経済社会の在り方の変革が求められていることを教えていただきました。
企業はSDGsのウエディングケーキモデルを理解し、環境・経済・社会の統合的な課題解決をすることが重要であり、社会的な課題解決が事業機会と投資企画を生み出していることを教えていただきました。
気候と自然の統合、ビジネスの海外事例と取組による営業利益の変化などの実例も紹介いただき、今後国内企業が取り組むべき事項についても教えていただきました。
また何から始めて良いかわからない企業に対して、自然への依存と影響を見える化することから始めることを教えていただき、サプライチェーン全体で自然とのつながりを知ることが重要だと学びました。
また、TNFDのタスクフォースメンバーとしての立場として、TNFDについて紹介いただき、現状の方向性や春にβ版が発表されることなどを教えていただきました。
16時20分~16時30分
質疑応答
- 自然資本に対する取り組み、成果の見える化、管理の方法について難しいという印象があります。温室効果ガスのように定量化しづらい面もある中で、「見える化」「管理方法」について具体的な方法をアドバイスお願いします。
→ 日本の企業は生物多様性の方針・宣言や情報開示は世界でもトップクラス。具体的な方法論に関心が向きがちだが、TNFDのなかでも色々なツールを整理して開示していく予定である。
よって、現段階でこれという風に絞り込まないほうが良い。
- 原口様がお考えのガバナンスの在り方として望ましい姿を教えて下さい。
→ TCFDのなかで求められるガバナンスは、経営・取締役会議のリスクマネジメント議論において気候リスクが課題として挙がっていること。すべての社員がESGの課題を理解して、特に本業の中で関係する事業部門など、すべてが連携していないといけない。自然に関しても同じで、サプライチェーン全体を俯瞰して見たときの課題を理解し、すべての社員が連携していかないといけない。
- サステナブルの社会の実現には、企業の取り組み及び方針を正しく理解して投資の行動をしていただく必要があります。そのための投資家とのコミュニケーションで重要な事項を教えて下さい。
→ 投資家の中でも自然関連のリスクを見る準備を始めている。その人たちの質問に対して、それが何を意識したものなのか?理解をしておいたほうが良い。ただ単純にOECMに登録しているだけではいけない。サプライチェーンの中の何処にリスクがあって、その解決のためにどんな投資を行っている(その例がOECM)といった様に説明をしないといけない。
16時30分~16時40分
事務連絡
自然共生分科会からのお願いとお知らせ
16時40分
閉会