開 催 日:2021年1月20日(水曜日)
形 式:Web会議形式(Zoomウェビナー)
主 催:環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)自然共生分科会
講 師:五箇 公一氏
(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 生態リスク評価・対策研究室 室長)
参加者数: 149名
セミナー開催の背景と内容・参加者の声
今年度、EPOC自然共生分科会では、生物多様性/愛知目標の2050年ビジョン達成に向けた次期ミッションである“ポスト愛知目標”の立案状況を早期に把握し、企業活動に伴い発生する様々な影響やリスクの対応に繋げていくことをテーマに活動しています。
しかし、昨今の世界的規模で猛威を振るっているコロナウイルスについても、生物多様性の破壊が大きく関わっていることを知り、その実態と“ポスト愛知目標”への影響など最新情報を学習することで企業として/個人として取り組むべき重要課題を認識し、根本的な解決策に繋げていくことを目的に今回のセミナーを企画いたしました。
なお、本セミナーは新型コロナウイルスの蔓延もあり、Zoomを使った オンラインセミナーで開催いたしました。
講師(五箇先生、下段中央)とスタッフ
講師には、国立環境研究所の 五箇 公一氏をお招きし、「生物多様性の破壊がもたらす新興感染症の脅威と日本が目指すべきポストコロナ社会について」というタイトルで生物多様性保全の必要性と現状抱える危機に加え、新型コロナウイルスに関する最新の動向、ポストコロナ社会に向けて実現すべき内容についてご講演をいただきました。
生物多様性に関しては、考え方や必要性に加え、実例を交えながら生物多様性が危機を迎えていることを説明いただきました。また、新型コロナウイルスの国内外の動向を最新のデータを交えて説明いただくと共に、自立型の地域分散型社会が今後の日本の目指すべき姿であることを学びました。
最後は、webで受け付けた参加者からの質問に対し、丁寧に回答をしていただきました。
参加者からは、「新型コロナに関する最新情報を得ることができてよかった」「五箇先生の講演会をシリーズ化してほしい」といった感想に加え、「オンライン開催で参加しやすい」「手元のPC画面で確認しながら話を聞くことができ、オンラインでよかった」との意見をいただきました。
オンラインセミナー視聴の様子
プログラム
14時00分〜14時10分 開会挨拶
EPOC副幹事長
ブラザー工業株式会社 法務・環境・総務部
環境推進グループ 藤岡 昌也 氏
14時10分〜16時10分 基調講演
「生物多様性の破壊がもたらす新興感染症の脅威と日本が目指すべきポストコロナ社会について」
【講 師】
国立研究開発法人 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター
生態リスク評価・対策研究室 室長 五箇 公一 氏
【講演概要】
人間は生物多様性が生み出す様々な生態系サービスを享受して生きており、生物多様性の保全は、「エコではなく人間が生き残るためのエゴである」という本質的な考えを教えていただきました。
また、生物多様性が人間活動による「生息地破壊」「乱獲」「汚染」「外来種の増加」等により危機的な状況にあることを具体的な事例により紹介していただきました。特に、我々個人の便利で豊かな日常生活の背後にそうした環境影響要因が潜んでいること、そして環境保全のためにはまず一人一人が自らの生活様式から見直す必要があることが示されました。
そして、世界的規模で猛威を振るっているコロナウイルスについては、生態学の視点から、国内外の最新動向を教えていただきました。
新型コロナウイルス、は全体としてみれば致死率は高くなく、普通の風邪とする意見も一部にあるが、この新興感染症には未知なるリスクが無数に存在し、潜在的な不顕性感染事例も多いことなどから、何も対策を取らなければ蔓延が続き、医療体制の逼迫など社会に対するリスクから解放されないことが推測され、新型コロナウイルスを人間社会から排除する必要がある。そのためには感染を広げない、他人に感染させないという利他意識と行動が必要となり、科学が勝利をするまで「withマスク、withソーシャルディスタンス」の実践が重要であることを学びました。
また、近年は環境破壊によって新興感染症が続出しており、ポスト・コロナウイルスの新たな感染症が待ち構えていることが想定されるため、コロナ対策の延長戦としてニューノーマル経済を確立していくことが重要であることを教えていただきました。
新型コロナウイルスの災禍は、グローバル・サプライチェーンによって加速されたことから、今後は地域や社会、国同士が固有性という競争力に基づく適度な張力によってバランスをとる健全なグローバル化を目指すべきであり、今後日本は資源をどのように循環させるか考えるべき状況に入っていることを学びました。
日本は里山という環境で自然共生型/循環型生活様式を過去に確立していたが、高度経済成長などによりその文化が劣化してしまっている。今こそ美しく・自立した日本(里山)を取り戻すため、スマート農業・林業・水産業や地産地消型再生エネルギーを導入し、自立型地方分散社会を実現すべきであると教えていただきました。
参加者からは、「生物多様性について個人意識での活動だけではなく、会社として取り組む必要性を感じた。」「日本という国の目指すべき方向性の話まであり、大変有意義な内容であった。」といった感想をいただきました。
16時10分〜16時20分 質疑応答
生物多様性保全のゾーニングを管理するルール(規制)が必要だと思いますが、そうした動きはあるのでしょうか?
→日本においては里山での人間活動の存在がゾーニングになっていた。今後は1次産業をしっかり回していくことが重要である。
現在盛んにワクチンが開発され、世界で運用が開始されていますがインフルエンザの様に予防接種により安心できる日は来るのでしょうか?
→将来的には必ず来るが、そこまでに時間がかかるかもしれない。
世界中で同時蔓延しているため。全世界がワクチンを打つ必要があり、まだ3〜5年かかるかもしれない。今はマスクの着用やソーシャルディスタンスの確保で感染拡大を防ぐことが重要である。
ニューノーマル経済のモデルとして、良い事例があれば、教えて下さい。
→台湾、ニュージーランドは上手く実施している、最初に厳しく制限して感染者をゼロにしているニュージーランドの観光収入の7割は自国民によるものであった。日本も自立した社会を実現するのが重要。各国がポストコロナの新時代の検討を始めている中で、日本だけが遅れるのは怖い。他国を真似するだけではなく、やり方を自国で考えなければならない。
今後にむけて我々企業はどんな対策をする必要が有りますか?
→廃棄物、リサイクルの管理を行っていくことが重要。ゼロエミッションを目指すことが必然的に生き物の環境を守ることにつながる。どんなものが生きていないといけないのか、どのような自然を取り戻すのかを考えていけると良い。
正確な情報を得られるソースとして、先生自身が心掛けていることを教えてもらいたい。
→国立環境研究所のホームページや私(五箇先生)の本を読んでいただければ。また、心掛けていることは、ローカル・日本らしさを大事にすること。展示フィギュアも廃品を集めて価値を見出している。
オリンピックは開催できると思いますか?
→ 個人的な意見としては、無観客でなければ開催は難しいのではないかと考えている。5月までに人口の半分(5,000万人)がワクチンを打てれば開催できるかもしれないが、現状そこまで行くのは難しいのではないか。
16時20分〜16時25分 事務連絡
自然共生分科会からのお願いとお知らせ
16時25分 閉会