セミナー

EPOC自然共生社会分科会セミナー2018
「生物多様性とビジネスチャンス」


概要

日時:2019年2月5日(火曜日)13時〜17時10分
場所:MAZAK ART PLAZA(マザックアートプラザ)(名古屋市東区葵一丁目19番地30号)
主催:環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)自然共生社会分科会
参加者数:85名

【セミナー開催の背景と内容・参加者の声】
「愛知目標」の最終年が2020年に迫り、企業に対しても自然共生社会の構築は、気候変動対策や資源循環対策、またSDGsの様々なゴールへの取組みなどの国際目標を関連付けて取り組むことが求められています。
今回のセミナーでは、生物多様性の取り組みをより実効性のあるものにするために“生物多様性”をビジネスチャンスとして戦略的に捉える様々な情報や事例紹介として、基調講演の第一部は、生物多様性における専門家から、第二部は金融におけるESGの専門家から、第三部はSDGsの専門家から、第四部は生物多様性の企業の取組み事例紹介としてそれぞれの分野からのご講演を頂きました。
最後は、全講演者によるパネルディスカッションを行い、全体質疑も交え、様々な視点でのご意見を伺いました。
参加者からは、幅広く多様なテーマの講演で生物多様性について深く考える良い機会になり大変良かった、SDGsと生物多様性との関係性に深い繋がりあることが発見できた、といった感想を頂きました。


<プログラム>

    • 13時〜13時05分
    • 【主催者・開会挨拶】
    • 13時05分〜13時45分
    • 【基調講演1】
      「愛知目標2020の達成とその後の活動目標について〜COP14を終え、COP15に向けて〜」

    【講師】
    IUCN日本委員会 会長
    一般財団法人 自然環境研究センター 上級研究員 渡辺 綱男氏


    【講演概要】
    2010年に開催されたCOP10/生物多様性条約第10回締約国会議は、2020年目標(愛知目標)の合意、ABS議定書の採択、気候変動と同様に生物多様性が政治課題となったこと、SATOYAMAイニシアチブの提唱など、意義のある会議であったことを再確認して頂きながら、国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)の施策として生物多様性アクション大賞、UNDB-J認定連携事業をご紹介いただきました。
    また、この10年の生物多様性に関する主な動きとして東日本大震災後、2012年9月に閣議決定された生物多様性国家戦略2012-2020の5つの基本戦略、国際的な動向として生態系を活用した防災・減災、「パリ協定」の採択(2015年)、環境・社会・経済にわたる包括的な目標として持続可能な開発目標(SDGs)の採択(2015年)、目指すべき社会像としてのUNDB-Jロードマップ(2016年)、第五次環境基本計画(2018年)、「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトに触れながら地域の保全活動の促進に向けた課題、自然資本をとりまく動き、企業に対して求められている課題と、この課題が事業機会拡大による企業価値向上の契機であり、ビジネスチャンスとなりうることを学びました。
    さらに2018年11月17〜29日に開催された生物多様性条約COP14の結果としてシャルム・エル・シェイク宣言の採択、ポスト愛知目標2020の議論の概要について、また最後に愛知目標に取り組むための支援事業としてにじゅうまるプロジェクトへの参画についてもご紹介いただきました。

    • 13時45分〜14時25分
    • 【基調講演2】
      「ESG投融資と情報開示の重要性〜自然資本評価に係るリスクと機会〜」

    【講師】
    三井住友信託銀行 経営企画部サステナビリティ推進室室長 後藤 文昭氏


    【講演概要】
    「ESG」という概念を2006年に初めて打ち出したのは、国連の責任投資原則(PRI)で、このPRIが中心となり投資手法としてのESGは日々進化を遂げていること、ESG市場の世界規模は2016年度時点で約2500兆円、日本も出遅れたものの136兆円に達しており、金融市場におけるESGの爆発的な拡大について触れた後、投資家や金融機関は気候関連のリスクと機会が企業経営によって、どのような財務的インパクトに転換されるかの説明を求めており、自然資本全般にも当てはまるため、これらの非財務情報を開示する重要性について分かりやすく説明していただきました。
    さらに、サプライチェーン上流での自然資本への依存度や負荷が大きく、かつ影響がグローバルに生じる事業においてビジネスの持続可能性を高めるためには、調達リスクマネジメントの重要性にも触れ、大企業のみならず、中小企業もサプライヤーとして重要な関わりを持つことを学びました。
    また、三井住友信託銀行の自然資本評価型環境格付融資における評価手法を踏まえ、自然資本問題の解決につながるSDGs、自然資本問題に関連するSDGs、自然資本問題の解決で達成されるSDGsといった自然資本を金融に組み込みSDGsの達成に貢献する自社の取組みについてもご紹介いただきました。

    • 14時25分〜14時40分
    • 【休憩】
    • 14時40分〜15時25分
    • 【基調講演3】
      「SDGsにおける生物多様性保全活動の役割について」

    【講師】
    SDGパートナーズ有限会社代表取締役CEO 田瀬 和夫氏


    【講演概要】
    SDGsは、人類の長期生存戦略であり、経営における付加価値としては、時間的逆算思考・論理的逆算思考・リンケージ思考があること、また生物多様性は、人間の生活や経済の基盤に関わる問題であり、持続可能な社会を実現するための前提であるため、その分関係者も多く、調整が難しいことを学びました。
    そしてSDGsが国連で採択され、ESG投資が主流化して以降、行政だけでなく企業による生物多様性に関わる取組みが進んでいること、各ESG格付機関も生物多様性についての取組みは評価基準に入れているが、多くの指標の中の一つの位置づけに留まっているとの紹介がありました。
    生物多様性の取組みを主流化させるために、定量化と認証の整備による競争原理の導入、結果として取り組むことによるメリットの設計を考える必要があることを学びました。

    • 15時25分〜16時25分
    • 【基調講演4】
      「電機・電子4団体における生物多様性保全活動の紹介」
      〜企業が取り組むはじめての生物多様性Let's Try Biodiversity!(LTB)〜

    【講師】
    電機・電子4団体生物多様性WGシニアアドバイザー
    ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社
    環境部環境推進課シニア環境マネージャー 勝田 淳二氏


    【講演概要】
    電機・電子4団体はCOP10を契機に2011年5月に「生物多様性ワーキンググループ(WG)」を発足し、12社のメンバーで活動されています。
    WGは生物多様性の保全に向けた愛知目標と事業活動の関連性並びに業界としての貢献の方向性を行動指針で提示し、次に教育・啓発用ツール「Let's Try Biodiversity!(LTB)」の提供や講演会を開催することで、2018年度生物多様性アクション大賞の優秀賞を受賞されました。
    LTBは生物多様性の最初の一歩となる取組を誰にでも分かるように、活動事例の検索から具体的な取組みを知ることができ、地域との連携、生物多様性と事業活動の相互影響、在来種や外来種との接し方などを理解することができ、具体的な生物多様性の保全活動の事例が紹介されています。
    また、生物多様性の基本的な考え方や業界との関わりが理解できる教育・啓発ツール「Let's Study Biodiversity!(LSB)」も公開しており、パワーポイント形式のツールなので自社の状況に合わせた活用もできるとのことです。
    LTBやLSBを活用して生物多様性保全活動を始めた際には、「生物多様性活動データベース」への登録により取組みの輪を広げることが出来るなど、公開ツールを利用した導入から関連組織との連携までをご紹介いただきました。

    • 16時25分〜17時
    • 【パネルディスカッション】

    SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO 田瀬 和夫氏にファシリテーターを務めていただき、全講演者によるパネルディスカッション形式での全体質疑を行い、生物多様性に関する有効な産官学民連携のカギ、自然資本の重要性、生物多様性に取り組むインセンティブ、経営者の認識及び経営への影響、生物多様性とビジネスチャンスなど様々な切り口でのご意見を交わしていただきました。

    • 17時〜17時10分
    • 【事務連絡】
    • 17時10分
    • 【閉会】