2017年度第3回EPOC環境経営先進セミナー
「水リスクの動向と企業の対応」
概要
最近、環境経営において水資源のリスクが注目されるようになりました。国連のSDGsの課題に取上げられ、またCDPウォーターがサステナブル企業の指標の一つとして重要視されています。特に、海外では水リスクの高い地域もあり、サプライチェーンも含め事業への影響は無視できません。
今回、基調講演では、水資源のエキスパートとして著名な沖様から水リスクの国際的な動向について、事例講演では、富士フィルムの大貫様から企業の対応事例についてご紹介いただきました。参加者からは、「初めて水リスクの話を聞き、危機感を持った」「具体的な企業の事例が聞けて大変参考になった」などのご意見をいただきました。
日時:平成30年2月2日(金曜日) 14時30分〜17時
会場:名古屋商工会議所2F大ホール
(名古屋市中区栄2丁目10−19 名古屋商工会議所内)
参加者: 72名
<プログラム>
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- 14時35分〜15時35分
- 【基調講演】
「水リスク管理とSDGs」
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【講師】
沖 大幹 氏(国連大学上級副学長、東京大学教授)
【講演概要】
本講演では、はじめに水リスクと一言で言っても渇水もあれば水害もあり、タイの洪水や東海大豪雨の事例を説明。身近な愛知県の事例では、終戦後に従来は洪水の危険があった地域も宅地開発されたため思わぬリスクが潜んでおり、工場立地する場合は地域のハザードマップに加え、古地図が参考になるとのこと。そして、近年の異常気象により、洪水や大雨などの風水害の大規模発生頻度が高くなっており、地震よりも人的および経済被害が甚大であるため、企業は風水害のリスクを考慮する必要があるとのこと。
一方、世界的にも水リスクは深刻にとらえられていて、SDGsの課題の一つに挙げられている。そのため、企業の水リスクへの対応はESG投資の評価項目になっており、その代表的な指標がCDP WATERである。さらに、CO2同様に製品の原材料調達から廃棄にいたるLCA的な水リスクが考慮されるようになり、WATER FOOT PRINTの考え方が、ISO14046として規格化が欧州中心に検討されている。日本企業は規格化に対しネガティブにならず、積極的に参画すべきで、さもないと欧州企業に主導権を握られて苦境に立つ場面が懸念されるとのこと。
講師の沖氏
ご講演の様子
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- 15時45分〜17時
- 【事例講演】
「富士フィルムの水リスクへの対応」
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【講師】
大貫 良子 氏(富士フィルム株式会社CSR推進部環境・品質マネジメント部)
【講演概要】
本講演では、富士フィルムで水資源の対応をご担当されている大貫様に、富士フィルムグループの水資源への取り組みについて豊富な事例をご紹介いただきました。富士フィルムは創業時から、フィルム製造に欠かせないきれいな水を使って、使った水はきれいに処理して自然に返すという考え方があり、その精神をグローバルに拠点展開しているとのこと。
世界の地域ごとに水ストレスの差が大きいので、水ストレスと自社の事業への影響度(水使用量、事業規模など)から、拠点の水リスクの大きさを評価。重大な水リスクをもつ拠点はなかったので、各拠点に応じた目標を設定して取り組みを推進しているとのこと。
また、「ウォーターフットプリント算定ガイドライン」を自社で策定し、ライフサイクル全体での評価を推進。今年度から原単位目標に加えライフサイクルでの水使用量の把握・削減目標も設定し、更なる施策を進めるとのこと。
講師の大貫氏
ご講演の様子
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