第3回EPOC環境経営先進セミナー
「2030年とそれ以降を見通した環境経営のあり方」
概要
企業は、将来の社会動向に対応したビジョンをもつ必要があります。国連の持続可能な開発目標(SDGs)では2030年までの世界各国が取組むべき社会課題を提示しています。また温暖化対策では2050年に向けた目標を掲げています。そのような背景の中で、企業の環境経営のビジョンも3〜5年先ではなく2030年、さらにそれ以降に向けた目標を考える時期にさしかかっていると思われます。
今回のセミナーは、講演Tでは環境課題に対して日本企業が世界の先進企業とベクトルを合わせるための方法論について、講演Uでは未来を見通す力とそこからつながるビジネスへの展開について という内容でした。企業に求められる長期的な環境経営のあり方について、お2人の豊富な知識とご経験から論じていただきました。
日 時:2017年1月25日(水曜) 14時〜17時
会 場:マザックアートプラザ4F会議室
(名古屋市東区葵1−19−30)
参 加 者:52名
<プログラム>
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- 14時5分〜15時20分
- 【講演I】
「環境対応がなぜ周回遅れになるのか 〜先進企業になるための思考法〜」
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【講師】
安井 至 氏(一般財団法人 持続性推進機構 理事長、東京大学 名誉教授)
【講演概要】
2015年のパリ協定を境に世界は大きな変革を迎えている。温暖化による様々な“ティッピングエレメント”(臨界点を超えると止まらない現象)の発生を回避するため、今世紀後半には、CO2排出量ゼロ“Net Zero Emission”を達成する必要がある(“逆産業革命”)。一方、2015年にGPIF(日本年金積立金管理運用独立法人)が国連責任投資原則“UN-PRI”に署名し、ESG投資を宣言した。このような動向は機関投資家に影響を与え、今後温暖化対策の取組みが遅れている企業への投資が引揚げられる(Divestment)可能性がある。
日本企業が欧米に対して温暖化の取組みが遅れている背景には、日本の特異な文化・思想があると考えられる。温暖化2℃ゴールを日本語では2℃目標と約して“必達の義務”が生じるが、欧米では必達でなく“ゴールに向かう姿勢”を意味する。日本の企業も例えその達成可否が定かでなくとも長期目標を公表することが重要。
参加者の皆様からは、欧米に対する日本の文化や思想の特異性が温暖化対策への障害になっていることを感じたなど、大変参考になったというご感想をいただきました。
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- 15時40分〜16時55分
- 【講演II】
「2030年に存続できる会社、できない会社」
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【講師】
石田 秀輝 氏(合同会社 地球村研究室 代表社員、東北大学 名誉教授)
【講演概要】
子供や孫が大人になったときも笑顔があふれる美しい国になってほしいという思いから、“バックキャスト”で物事を見るようになった。 バックキャストは、何らかの制約の中でも、あるべき姿に向かっていく考え方。
日本のような先進国では、物質的欲求は劣化し、心の豊かさを求めている傾向にあり、新しい社会(ポスト資本主義)を作るべきではないかと考える。これは言い換えると、従来の近代化の中で共同体および自然から個人が分離する傾向にあったのに対し、今後再び個人は共同体、そして自然に回帰していくのというもの。
企業も、製品のコモディティ化を避けるためには、最先端なものでなく、心の豊かさに対する欲求を満足させるようなものを作り出せば、サステナブルな活動になる(間を埋めるビジネス)。
間を埋めるビジネス事例:アミタの南三陸BIO(住民の廃棄物からバイオガス精製)
IKEAのキット家具(DIYでの家具製作)
参加者の皆様からは、バックキャストの考えが重要ということがわかったとのご感想をいただきました。
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