温暖化・省エネ分科会/海外交流分科会共催セミナー
「気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)を受けて」
概要
去る12月7−18日、2013年以降の新たな国際枠組みへの合意を目指し、デンマークのコペンハーゲンで気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)が開催されました。結果は、日米欧や中国など20カ国以上の首脳らの協議でまとめた「コペンハーゲン合意」を「留意する」との決定を採択して閉幕しました。日本が国際交渉においてリーダーシップを発揮していくには、COP15の結果をしっかりとふまえることが重要となります。一方、日本の企業がどのような環境戦略を考えているかも重要です。こうした動向を踏まえ、今回、温暖化・省エネ分科会/海外交流分科会共催セミナー「気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)を受けて」を企画しました。
前半の講演では、経済産業省 産業技術環境局の小泉秀親様に「COP15の報告−日本の国際交渉について−」の題で、今回の国際交渉の舞台裏についてお話いただきました。
大変判り易い講演で、国際会議は各国の国益が絡み、世界全体の交渉状況がいかに困難なのかがよく理解できる内容でした。COP15の交渉経緯など苦労されたそして大いに努力された様子を実感しました。
後半の講演では、株式会社日立製作所 地球環境戦略室環境企画センター長 平野 学様に「日立グループの環境戦略」の題で、まず「地球温暖化の問題」そして、「世界および日本の動向」、それを踏まえた上で立てられた「日立グループの環境戦略」についてお話いただきました。
こちらも大変判り易い講演で、これからのCO2削減は民生(家庭)部門の努力が必要であり、より環境配慮型商品ビジネスに注力していくことが重要との認識を新たにいたしました。
参加総数は86名と多くの方に参加いただき、気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)の関心の高さが伺えました。
開催日:2010年2月1日(月曜)14:00〜16:45
会 場:名古屋国際会議場224会議室(名古屋市熱田区熱田西町1−1)
主 催:環境パートナーシップ・CLUB(EPOC) 温暖化・省エネ分科会/海外交流分科会
<プログラム>
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環境パートナーシップ・CLUB 温暖化・省エネ分科会長
日本ガイシ株式会社 執行役員 環境経営括部長 阪井 博明 氏
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- 14:10〜15:30
- 【講演I】 「COP15の報告−日本の国際交渉について−」
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講師:経済産業省 産業技術環境局 地球環境対策室 課長補佐 小泉 秀親 氏
【講演概要】
講演資料:「COP15の報告−日本の国際交渉について−」
- はじめに(気候変動枠組条約・京都議定書について)
- 京都議定書の問題点
- 京都議定書目標達成のための我が国の国内対策
- ポスト京都の国際枠組みに向けた国際交渉
- 各国の目標値の評価
- 新たなクレジットメカニズムについて
【メッセージ】
京都議定書の問題点
- 京都議定書で削減義務を負う国の割合は世界のCO2排出量の3割弱であること。大排出国である米・中・印は削減義務なしであり、途上国の排出にはなんら制限がなく、2010年までに世界全体の排出は4割増加していること。
- 各国の削減目標が、各国の実質的な公平性を全く考慮しないつかみの数字で決まってしまったということ。
- 90年という基準年はEUに有利であること。EU全体での目標達成が認められており、一部加盟国の排出を相殺している(いわゆる「EUバブル」)。
京都議定書目標達成のための我が国の国内対策
- 政府として1億トンの京都メカニズム・クレジットを外国から国費で購入する。
産業界も自主行動計画の達成に向け、電力、鉄鋼等約3.1億トンを海外から調達予定。
- 1990年度と比べ、産業部門の排出量は減少しているが、民生部門(業務その他、家庭)の排出量は大幅に増大している。
ポスト京都の国際枠組みに向けた国際交渉
- COP13(2007年12月、バリ)で、2009年(COP15)までに新たな国際枠組みについて合意を得ることに合意。交渉のポイントは、(1)共有のビジョン(長期目標)、(2)緩和(各国の削減目標)、(3)適応、(4)資金協力、(5)技術移転。
- 各国の排出動向と事情(米05年比▲17%程度、EU90年比▲20%、ロ90年比▲10-15%、日90年比▲25%、加06年比▲20%)
- COP15の主要論点。 緊急に集められた首脳級会合において、「コペンハーゲン合意」を作成。少数国の反対により正式採択とはならなかったものの、多くの国の賛同を得て、「留意する」という形で取りまとめられた。主なポイントは(1)長期目標(2050年世界半減)、(2)MRV(測定、報告、検証)、(3)目標値の内容(数値と前提)、(4)目標の設定方法(新たな政治合意と京都議定書の関係)、(5)資金支援
各国の目標値の評価
- 主要排出国は、概ね、各国の目標値を公表。先進国は排出削減総量、途上国はBAU比もしくは原単位ベースで国別行動を約束した。
- 限界削減費用(RITE試算)による各国の目標値比較では、CO2を1トン削減する努力に要する費用は、日本$476、EU$135(CO2削減目標90年比▲30%)、EU$48(同▲20%)、米国$60、中国$12(CO2削減目標GDP原単位ベース▲50%)、中国$8(同▲40%)。
- Ecofys評価では、EUの現在目標は、気候変動分野でリーダーシップをとるのには不十分。EUが目標値を30%にまで引き上げても、日本の25%目標の方が野心的と分析。(2009年12月公表)。
- Ecofys、ポツダム気候影響研究所およびClimate Analyticsは、共同で各国の中期目標について総合評価を実施。日本の目標値は「十分」。米国・EU・中国の目標値を「不十分」と分析。(2009年11月)。
- オランダ環境評価庁(国立研究機関)は、先進国の削減目標について分析。EUは30%に引き上げて、何とか長期の削減パスに整合。先進国の中では、日本の25%目標のみ、長期削減パスをクリア。
- 革新技術の開発・普及により、2050年排出半減は実現可能。一方、実現には、2050年までに年間45兆ドル(約4,700兆円)、世界全体のGDPの1.1%相当の追加投資が必要。
新たなクレジットメカニズムについて
- 国連の特別作業部会では、既存の京都メカニズムの改善に加え、新たなクレジットメカニズムについて提案が行われている。
- 京都メカニズムの改善;特にCDMについて、対象拡大、手続きの効率化など。
- 新たなクレジットメカニズムの提案
- 途上国政府が設定した目標の超過達成分にクレジットを付与:
NAMA(国別削減行動)クレジットメカニズムなど
- 途上国政府がセクター別の削減目標を設定し、超過達成分にクレジットを付与:
セクター別クレジットメカニズム、セクター別排出量取引など
- 途上国の森林減少抑制に対して新たにクレジットを発行:
REDD(途上国の森林減少・森林劣化)クレジットメカニズム
- 米国法案では、国内外のクレジットを米国政府が独自に発行する仕組みを提案。
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- 15:45〜16:35
- 【講演II】 「日立グループの環境戦略」
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講師:株式会社日立製作所 地球環境戦略室
環境企画センター長 平野 学 氏
【講演概要】
講演資料:「日立グループの環境戦略」
- 地球温暖化の問題
- 世界および日本の動向
- 日立の取り組み
- 環境ビジョン2025
- 事業への展開
- おわりに
詳細は、講演資料「日立グループの環境戦略」(PDF)を参照ください。
【メッセージ】
日立の取り組み
- 環境ビジョン2025
- 持続可能な社会をめざして(1)地球温暖化の防止、(2)資源循環的な利用、(3)生態系の保全、に取り組む。
- 年間1億トンのCO2排出抑制への貢献を目指し、製品による年間CO2排出量1億トンの抑制を計画。ポイントは、「2025年度までに日立グループのあらゆる製品を環境適合製品に」「環境適合設計アセスメントに基づいた製品開発」「業界トップレベルの環境負荷低減を実現」「グロバール協創型プロジェクトの推進」。
- 事業への展開(具体例)
- 火力発電:高効率化とCCSによるCO2排出量削減
原子力発電/再生可能エネルギー:技術による普及への貢献
- 中国雲南省 省エネプロジェクト
- ESCO事業
- 物流:モーダルシフトの推進(省エネ・低公害、大量輸送に優れた鉄道の利用)
- シンガポールの大学との協創による高性能水処理技術開発
- 環境配慮型データセンター
- モーター、インバータと並ぶ第3のデバイスコアとしての「電池」
- 効率の高い鉄道をさらに高効率化(A-train, ハイブリッド車両、気動車用ハイブリッドアクティブシフト変速機)
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環境パートナーシップ・CLUB 海外交流分科会リーダー
株式会社日立製作所中部支社 環境担当マネージャー 神田 英治 氏
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「セミナーアンケートまとめ」