第1回温暖化・省エネ分科会セミナー
「地球温暖化対策の中期目標についての解説」
概要
去る6月10日、2020年に向けた日本の中期目標「温室効果ガス排出量を2005年比で15%削減する」が発表されました。それは、各分野の専門家がデータを基に議論を進め、さらには、各業界へのヒヤリングや世論調査を実施するなど、政策決定プロセスのうえでも画期的な内容となりました。その後、民主党の鳩山由紀夫代表は9月7日、日本の温暖化ガス削減の中期目標について「2020年までに1990年比25%削減を目指す」と表明、「マニフェスト(政権公約)に掲げており、あらゆる政策を総動員して実現を目指す決意だ」と語りました。こうした動向を踏まえ、低炭素社会の実現に如何取り組んでいくのか、その対策を捉えることを目的としてセミナーを開催しました。今回、温暖化・省エネ分科会セミナー「地球温暖化対策の中期目標についての解説」と称してEPOCの会員の皆様にご参加いただきました。
前半の講演では、経済産業省 産業技術環境局の清水淳太郎様に「日本の地球温暖化対策の中期目標について」の題で、「地球温暖化問題とは」でIPCCの第4次評価報告書のエキスを、つぎに「京都議定書とその目標達成計画に向けた取組み」について、そして「国連気候変動首脳会合における鳩山総理大臣演説」とそのスピーチに対する各国首脳・主なメディアの反応、国内の反応について、そして最後に「我が国の中期目標について」その目標に対する必要な普及・対策の考え方、具体案、経済への影響分析などをお話いただきました。政権交替したばかり、新政権の具体的な方針がまだ決まっていないため、あまり深く踏み込んだ内容にはなりませんでしたが、約30分の質疑応答では、様々な質問に丁寧にお答えいただきました。
後半の講演では、電力中央研究所 社会経済研究所の今中健雄様に「温暖化対策についての考え方」の題で、まず大幅なCO2削減が必要である現状を、つぎに「大幅削減に向けて」削減目標の意味そして何を具体的にすべきか、最後に日本の役割についても語っていただきました。
参加総数は、89名と、多くの方に参加いただき、地球温暖化対策の中期目標についての関心の高さが伺えました。
開催日:2009年10月16日(金曜) 14:00〜16:40
会 場:名古屋国際会議場133・134会議室(名古屋市熱田区熱田西町1-1)
主 催:環境パートナーシップ・CLUB(EPOC) 温暖化・省エネ分科会
<プログラム>
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環境パートナーシップ・CLUB 温暖化・省エネ分科会長
日本ガイシ株式会社 執行役員 環境経営括部長 阪井 博明 氏
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- 14:05〜15:15
- 【講演I】 「日本の地球温暖化対策の中期目標について」
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講師:経済産業省 産業技術環境局 環境経済室 課長補佐 清水 淳太郎 氏
【講演概要】
講演資料:「日本の地球温暖化対策の中期目標について」
- 地球温暖化問題とは
- 京都議定書について
- 京都議定書目標達成計画に向けた取組み
- 国連気候変動首脳会合における鳩山総理大臣演説
- 我が国の中期目標について
【メッセージ】
- IPCC第4次評価報告書(AR4)では、温室効果ガスの安定化濃度を6つのカテゴリーに区分し、それぞれに対応する既存の研究論文の成果を集めて、安定化濃度と排出パスの関係を整理。
- IPCCでは、3つの安定化濃度を設定し、既存の研究論文の成果を集めて、それぞれの濃度と先進国に要求される削減幅との関係を整理。途上国の削減幅について、参照されている論文においては、数値は示されていない。
- 地球温暖化対策推進法に基づき、京都議定書の6%削減約束を確実に達成するために必要な措置を定めるものとして、また、2004年に行った地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しの成果として、2005年4月、同大綱、地球温暖化防止行動計画、地球温暖化対策に関する基本方針を引き継ぐ「京都議定書目標達成計画」を策定した。
- 【第3回 地球温暖化問題に関する閣僚委員会の結果概要(平成21年10月7日(水曜))より】
地球温暖化対策の検討体制について議論を行い、総理から次の指示がなされた。
- 地球温暖化対策を進めるため、菅副総理の下で、関係副大臣又は政務官から成る、次の2つの
検討チームを設置。(1)温室効果ガスの90年比25%削減という中期目標の達成に向けて必要なコスト等の検討を行うチーム。(2)「鳩山イニシアティブ」の具体的な方策の検討を行うチーム。
- また、国内排出量取引の制度設計についても、検討チームを、今後、速やかに設置。
- 加えて、地球温暖化対策の必要性について国民の理解を得るため有識者懇談会を設置する等の
方策を、今後、速やかに実施。
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- 15:25〜16:35
- 【講演II】 「温暖化対策についての考え方」
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講師:電力中央研究所社会経済研究所 主任研究員 今中 健雄 氏
【講演概要】
講演資料:「温暖化対策についての考え方」
- 温暖化の事実−大幅なCO2削減が必要
- 大幅削減に向けて−削減目標の意味
- 大幅削減に向けて−何をすべきか
- 日本の役割
【メッセージ】
- 温暖化は大きな問題―IPCC第4次評価報告書において気温2〜3℃以上の上昇により、どの地域も影響を受けるとされ、温暖化を抑制するには大幅削減が必要。
- 短中期的な目標は目安、メッセージとして意義をもつ。温度上昇には不確実性が大きく伴うことから排出削減と温度上昇の関係は一意にはならない。また排出主体すべてを制御できない。重要なことは長期的に大幅削減を目指すこと。
- 大幅な削減には技術の開発と普及が不可欠:技術の普及には様々なバリアが存在する。これらバリアの除去が重要であり費用対効果の高い方策から着実に行われるべき。このためのきめ細かな政策の PDCAが手助けとなる。
- 技術開発:他部からエネルギー部門への技術のスピルオーバーが革新影響をもたらす。健全で広範な技術基盤が重要。
- ニア・ゼロエミッションに向けた電気利用も温暖化対策のひとつの方策。
- 日本の役割は量より質。質の高い政策の発信を期待。
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環境パートナーシップ・CLUB 企業経営部会長代理
株式会社デンソー 安全環境推進部 地球環境室 室長 渡辺 芳紀 氏
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「セミナーアンケートまとめ」