EPOCエネルギーフォーラム報告書
はじめに
環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)では、「環境と経済の両立」を目指して、フォーラムを開催しました。今回は、環境技術として注目を浴びている「スマートシティ」と「水素」をテーマに、実用化に向けた最新の成果と今後の日本の環境技術戦略をご講演いただきました。
- 日 時:
- 2015年11月30日(月曜日)14時15分〜17時15分
- 場 所:
- ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋 7階「ザ・グランコート」
- 参 加 者:
- 183名
- 主 催:
- 環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)
- 後 援:
- 経済産業省 中部経済産業局 環境省 中部地方環境事務所
一般社団法人中部経済連合会 名古屋商工会議所
一般社団法人中部産業連盟
一般財団法人省エネルギーセンター東海支部
プログラム
14時00分〜14時05分 |
【開会挨拶】
EPOC会長 安井 香一
東邦ガス株式会社 代表取締役社長
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14時05分〜14時15分 |
【EPOC紹介】
EPOC幹事長 服部 雅夫
東邦ガス株式会社 環境部長
会員外の参加者向けに、幹事長より、EPOCとその活動についてご紹介しました。
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14時15分〜15時35分 |
【基調講演】
「スマートコミュニティ及び水素社会に係る今後の展望について」
経済産業省 資源エネルギー庁
省エネルギー・新エネルギー部長 藤木 俊光 氏
東日本大震災以降、エネルギー情勢は大きく変化し、多様化・多層化した柔軟なエネルギー需給構造の構築が求められています。そうした視点から、スマートコミュニティの必要性と意義を明快にご説明いただき、先導的役割を果たした国内4実証の成果、さらには、それらを踏まえて現在展開が進む新たなスマコミ事例についてご紹介いただきました。
また、利用段階でのCO2排出がゼロである水素エネルギーは、温暖化対策に資するだけでなく、日本が高い技術競争力を有し、産業振興に貢献する点で、国も力を注いでいる分野です。燃料電池自動車(FCV「MIRAI」)の発売開始とその後の普及拡大、さらには、2040年頃を想定するCO2フリー水素供給システムの確立など、水素社会実現に向けたロードマップとその取組みに向けた国の支援について、詳細にご説明を頂きました。
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15時45分〜17時15分 |
【事例紹介】
(1)「水素エネルギーサプライチェーン実現への取組み」
川崎重工業株式会社 技術開発本部
水素チェーン開発センター副センター長 西村 元彦 氏
川崎重工業株式会社は、水素製造や宇宙開発における液体水素、LNGなど極低温流体における豊富な技術実績を有しています。その技術を活用し、豪州等に大量賦存する褐炭から水素とCO2を取り出し、CO2を地下貯留(CCS)し、水素を液体水素に変換して極低温タンカーで日本に輸送し、発電や燃料電池自動車に使用するという「CO2フリー水素チェーンプロジェクト」についてご紹介いただきました。
講演の中で、現在はまだ高価な燃料電池自動車用の高純度水素が、安価な褐炭から製造し大量に輸送することで、試算では29.8円/Nm3(CIF)レベルに低減できること、その場合の水素による発電コストはLNG火力と遜色ない16円/kWh程度と試算されることなど、コスト面でも有望との試算が示されました。また、液化水素輸送船(液体水素タンカー)のタンクの基本認証の取得や、褐炭の利用とCCSが豪州政府から歓迎されていることなど、技術面や政治面でも本プロジェクト実現の道筋が立ちつつあることをご説明いただきました。
本プロジェクトは、東京オリンピックが開催される2020年にパイロットチェーンの稼働開始を目指しており、本格的な水素社会の到来がすぐそこまで来ていることを強く感じました。
(2)「東芝における水素社会実現への取組み」
株式会社東芝
次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム
統括部長 大田 宏之 氏
株式会社東芝は、再生可能エネルギーによる水電解水素の製造、水素による電力貯蔵、水素発電、燃料電池(PEFC、エネファーム)など豊富な水素技術の蓄積と実績を有しています。その技術を活用し、新たに開発した、余剰電力を水素で貯蔵するシステム「H2 One」についてご紹介をいただきました。
同システムは、水電解装置、水素タンク、燃料電池から構成され、余剰電力を水素として貯蔵し、必要な時に高効率に発電して電力供給するをパッケージシステムです。サイトに合わせてシステム構成を柔軟に変更でき、様々なビルのエネルギーマネジメント、燃料電池自動車(FCV)への水素供給にも利用可能です。また、災害時には自立型エネルギー供給も可能であることから、BCP対応や離島におけるエネルギー供給等の用途にも適用が可能です。さらに、SOFCと組合せた大容量型の「H2 Omega」(出力5MW)もラインナップするなど、ユーザーのニーズに細やかに対応可能なシステムとなっています。
海外での実証計画に加え、国内では、ハウステンボスでのH2 Oneによる最適エネルギーマネジメントや京浜地区における再エネ水素サプライチェーン実証等、多岐に亘る応用事例の計画についても具体的にご紹介をいただきました。
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17時15分〜17時30分 |
【総括】
EPOC顧問 架谷 昌信
愛知工業大学 特任教授
産官学の連携の重要性を踏まえ、今後のエネルギーのあり方、その実現に向けた技術開発の重要性について総括していただきました。
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フォーラムを終えて
気候変動の原因とされる温室効果ガスの排出削減は、世界共通の課題であり、日本は、その実現に向けて革新的な環境技術で貢献していくことが期待されています。そこで今回は、技術開発の最前線である「スマート技術」と「水素」について、政策と技術開発の両面から最新の動向と事例をご紹介させていただきました。本フォーラムが、ご聴講いただいた皆さまの環境技術戦略の立案と推進の一助となれば幸いです。
EPOCでは、今後も、活動が活性化し、一層有意義なものとなるよう努めてまいります。引き続き、皆さまのご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)会長会社事務局
東邦ガス株式会社 環境部