EPOCエネルギーフォーラム報告書
はじめに
社会の関心の高まりを受け、環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)では、今年度の企画活動において、エネルギーをテーマに取り上げています。分科会の枠を越えた企画を行うことで、より多くの会員のレベルアップや社会への情報発信を図り、環境行動の契機とすることを目的に、このたびEPOCエネルギーフォーラムを開催いたしました。
- 日 時:
- 2012年8月2日(木曜日)13時30分〜16時30分
- 場 所:
- 名古屋東急ホテル「バロックの間」
- 参加者:
- 209名
- 主 催:
- 環境パートナーシップ・CLUB
- 後 援:
- 経済産業省 中部経済産業局 環境省 中部地方環境事務所
(一社)中部経済連合会 名古屋商工会議所 (一社)中部産業連盟
プログラム
13時30分〜13時35分 |
【開会挨拶】
EPOC会長 新美 篤志
トヨタ自動車株式会社 代表取締役 副社長
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13時35分〜14時45分 |
【基調講演】
「エネルギー革命」
東京工業大学大学院 特命教授 柏木 孝夫 氏
国家戦略室のエネルギー・環境に関する選択肢について、2030年における3つのシナリオを中心に講演いただきました。現在、原子力発電の比率によりゼロシナリオ、15シナリオ、20〜25シナリオが提示されているものの、それぞれの前提条件が原子力発電の取り扱い以外にも異なる点が多いことや、各案における再生可能エネルギー導入の政策イメージなど具体的な解説を伺いました。また、今後のエネルギーのあり方を考える上で重要な4つのキーワードとして、(1)ピークカットを含めた節電、(2)再生可能エネルギー、(3)コージェネレーションシステムなどの化石燃料の高度利用、(4)国際インフラの整備についてもお話いただきました。
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14時55分〜15時05分 |
【EPOC紹介】
EPOC幹事長より、EPOCの活動紹介を行いました。
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15時05分〜16時30分 |
【事例紹介】
「中部電力のS+3Eに向けた取り組み」
中部電力株式会社 執行役員 環境・立地本部 環境部長 渡邊 広志 氏
S(安全)+3E(安定性・経済性・環境性)を同時達成する電力供給を目指した取り組みについて、国内のエネルギー自給率やエネルギーセキュリティーに関して日本が抱える構造的課題なども交えて紹介されました。また、夏期の需給見通しや浜岡原子力発電所の地震・津波対策などについて具体的な解説をしていただきました。全量買取制度による電気料金への影響をはじめ、再生可能エネルギーの普及に伴う課題や電力系統での対応、さらに電源選択肢に関する電力業界の考え方についても直接伺うことができました。
「東邦ガスの環境技術開発の取り組み」
東邦ガス株式会社 環境部長 服部 雅夫 氏
天然ガスの特性である環境性、供給安定性、経済性、利便性についての解説や、天然ガスの高度利用を始めとする技術開発についてお話いただきました。現在、開発が進められている燃料電池やスマートエネルギーハウスなどでの適用事例に加え、建物間連結熱ネットワーク技術やコジェネレーションによる街区レベルでの電力自立システム、系統安定化システムの構築などの詳細を伺うことができました。また、分散型エネルギーシステムの普及拡大やシステムの構築という中長期に向けた取り組みについて解説いただきました。
「変化に強い省エネ生産体質へ 〜エネルギーJIT(ジャストインタイム)活動〜」
株式会社デンソー 安全環境推進部長 大塚 春彦 氏
「エコビジョン2015」4つの柱に掲げる「エコファクトリー:環境効率追求」に基づいた環境経営を目指した省エネ・CO2の削減の取り組みについてお話いただきました。変化に強い省エネ生産体質づくりのため、(1)人(全員参加)、(2)技術(設備開発・新技術導入)、(3)エネルギーJIT(生産・供給)の3つの観点から、事例を紹介されました。具体的には、全員参加で省エネ共通項目を全工場でやり尽くす活動、省エネ小型加工設備の開発、「エネルギーはインフラではなく部品である」ことに着眼し、必要なときに必要な分のエネルギーを供給・使用することを生産情報でつなぐエネルギーJIT構想の取り組み等について説明していただきました。
「スマートシティにおけるエネルギーとITの融合事例」
株式会社日立製作所
社会イノベーション・プロジェクト本部
スマートシティエンジニアリング本部長 森田 清紀 氏
話題のスマートシティについて、開発の背景やITとの関わりを含め、具体的な事例を紹介していただきました。スマートシティは、各国や地域の固有の環境に応じた街づくりや、地域貢献の実現が求められ、長期的な課題に向き合う、足の長いビジネスとして取り組まれています。それを支えるのは、IT(情報技術)を活用した分析・最適化・シミュレーションであり、社会インフラと生活をサービスでつなぐことで、安心・安全・快適・グリーンを提供していることを解説いただきました。また、現在参画されているプロジェクトの事例についても伺うことができました。
総括
EPOC顧問 架谷 昌信
愛知工業大学 工学部機械学科 特任教授
最前線の状況について、様々な立場の見解を聞くことができ、意義のある企画となったというご意見をいただきました。
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アンケート結果
参加者の方へフォーラムの感想、EPOCの活用や期待、今夏の節電対策について伺いました。
EPOCエネルギーフォーラム_アンケート結果 (PDF14KB)
フォーラムを終えて
昨今、社会の大きな関心事となっている「エネルギー」をテーマとして取り上げました。今回は、EPOC2020年ビジョンに基づき、EPOCの役割の一つである「社会への情報発信」を行うため、会員以外の方にも公開いたしました。
経済産業省のエネルギー政策に関わる柏木孝夫氏を基調講演にお迎えした話題の2030年シナリオの解説などは、多くの方に好評いただけました。また、EPOC会員でもある4社の事例紹介は、供給側と需要側のエネルギーに対する考え方や取り組みを伺うことができ、参考になりました。
そして、参加者のアンケートでは、今夏の節電対策に関する取り組みを記入していただきました。昨年、EPOCで実施したアンケートと比較しますと、昨年同様の地道な活動の継続に加え、工場屋根の二重化やデマンド監視装置の導入などの投資を伴う対策が浮かび上がりました。当日の感想やEPOCに対するご意見も含め、アンケートにご協力くださいました参加者の方に、この場をお借りしてお礼申し上げます。
EPOCの活動を意義のあるものとするために、今後も会員の皆様のご意見を伺いながら進めてまいりたいと存じます。引き続き、皆様のご理解ならびにご参画を賜りますよう、お願いいたします。
EPOC会長会社 事務局 トヨタ自動車(株)プラント・エンジニアリング部