視察・調査

EPOC視察(企画活動)「低炭素化エネルギー関連技術の調査」

概要

日 時: 2015年8月27日(木曜日)〜8月28日(金曜日)
目 的: IPCCの第5次評価報告書でも話題になった、二酸化炭素貯留技術(CCS)の最新の実証実験に加えて、熱・電気・CO2の併給などエネルギー関係の先進的な技術の進捗状況を現地で確認し、理解を深める。
視察先: 1.新千歳空港 雪冷熱供給施設様
2.サッポロビール(株) 北海道工場様
3.王子製紙(株) 苫小牧工場様
4.(株)Jファーム苫小牧様
5.日本CCS調査(株)様 CCS実証試験現場
参加者: 34名

各施設の見学内容


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    1.新千歳空港 雪冷熱供給施設様


    新千歳空港様では、除雪集積された「雪」を新エネルギー源としてターミナルビルの夏季冷房に活用するなど、環境と人にやさしい「エコエアポート」の実現に取り組んでいます。
    北国ならではの雪冷熱供給システムの導入により、年間で35,800GJのエネルギーの省エネを実現し、2,100tのCO2の削減につながったとのお話を伺いました。
    当日は、雪冷熱熱交換器や貯雪ピットを実際に見学し、自然エネルギーである雪冷熱を長期間安定的に保存し、必要な時に効率よく供給する本システムについて、理解を深めることができました。

    雪冷熱熱交換器/貯雪ピット

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    2.サッポロビール(株) 北海道工場様


    国産での原料調達とビールづくりに適した冷涼な気候を求めて、北海道で創業したサッポロビール様の北海道工場を訪問しました。
    主力工場である北海道工場では、環境活動として、機器の高効率化、モーダルシフトの推進、バイオ水素・バイオエタノール製造、資源リサイクル、排水再利用システムによる水資源保全など、徹底した環境対策に取り組んでいます。視察では、まず創業時の精神を受け継ぐビールづくりの現場として、厳選された原料とたしかな技術により原料から芳醇な製品を作り出すまでの各工程を視察し、独自の製法と厳しい品質管理について説明を受けるとともに、地域の小学生親子が自然観察会なども実施しているビオトープ園を見学させていただきました。
    「潤いを創造し、豊かさに貢献する」という理念のもと、地域に貢献し、全ライフサイクルで環境に徹底して配慮する同社の取り組みについて理解を深めました。

    概要説明の様子/ビオトープ園

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    3.王子製紙(株) 苫小牧工場様


    王子製紙様の苫小牧工場は、1910年操業で、単一生産工場としては 世界トップクラスの規模を誇る同社の主力工場です。新聞のカラー化、オフセット化、軽量化、そして輪転機の高速化など、さまざまなニーズに対応するため、新聞用紙の品質・仕様だけでも実に200種類以上にものぼっています。ここでは主に新聞用紙や出版本文用紙などが製造され、年間総生産能力約122万トン、新聞用紙の国内需要の約4分の1強を供給しています。
    視察では、製紙行程に加え、バイオマス燃料である黒液回収ボイラーなどエネルギー利用設備を見学し、エネルギーの約3割に達するバイオマス由来燃料の使用や、紙ごみと廃プラスチックから作った固形化燃料(RPF)を使用したボイラーの導入、廃棄物エネルギーへの転換による化石エネルギーの使用の抑制など、CO2削減に対する広範で徹底した取り組みについてご説明いただきました。また、豊富な水源に恵まれた環境を活かした約5万kWの水力発電所を有し、工場で使用するとともに売電も行っているとのことでした。
    パルプから製紙までの一貫生産体制とその生産管理システムのたゆみない改善によって、製品用紙の安定供給と高品質化を推進していることに加え、省エネルギーやリサイクルを徹底しCO2低減を推進する同社の取組みについて理解を深めました。

    製紙工程の見学/工場内エネルギー設備の説明

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    4.(株)Jファーム苫小牧様


    Jファーム様は、ハウス内の温度、湿度、CO2、日射量、肥料などを最適な栽培環境になるよう制御する「スマートアグリシステム」の採用によりベビーリーフとトマトを栽培する最新の植物工場(2014年稼働)です。
    同工場では、この生育システムにガスエンジン発電機から生じる電気・熱・CO2を組み合わせ、電気を照明や空調に、熱を暖房に、CO2を植物の育成にといった形で最適に活用するトリジェネレーションを実現しているとの説明をいただきました。
    更に、木質チップを燃料とするバイオマス燃焼ガス浄化システムの導入によりエネルギー利用の最適化を図り、省エネと環境負荷低減にも取り組んでいます。

    PRセンター内コントロールルームの見学/植物栽培工場の見学

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    5.日本CCS調査(株)様 CCS実証試験現場


    日本CCS調査様は、CCS技術の開発と実証のため2008年に設立された民間CCS技術統合株式会社です。経済産業省の委託を受けて、2012年より北海道苫小牧地域でCCS実証プロジェクトを推進しています。
    現在、2016年度以降の圧入開始に向け、観測井やモニタリング機器整備、CO2の分離・回収・圧入設備の建設工事やCO2貯留のための圧入井掘削を行っています。(8月現在)
    当日は、CCS関連設備を見学させていただきながら、CCS技術の必要性や意義、同技術の開発状況や課題、今後の見通しについて詳しくお話いただき、理解を深めました。

    概要説明/CCS実証現場の見学


視察を終えて

今回の視察では、新たなエネルギー源の有効活用事例や最新の実証事例などを現地で確認することができました。
地域特有のエネルギーを工夫して効率よく使う事例、独自の技術を多く視察でき、非常に有意義な経験をすることができました。
最後になりますが、視察団を快く受け入れて頂いた各視察先様に、この場をお借りして御礼申し上げますとともに、引き続き、EPOCでは、循環型経済社会の構築と環境マインドの向上を目指して活動して参りますので、今後も皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

EPOC会長会社事務局(東邦ガス(株) 環境部)