視察・調査

EPOC視察(企画活動)「スマートエネルギー技術の最新事例について」

概要

日 時: 2014年8月4日(月曜日)〜5日(火曜日)
目 的: 環境性と経済性の両立に加え、災害時の事業継続にも資するスマートエネルギー技術について、工場を核とした最新事例、住宅の事例、熱・電気の受入先施設、それらへのエネルギー源である都市ガス工場等の視察を行い、総合的なエネルギーマネジメントシステムへの理解を深める。
視察先: 1.トヨタ自動車東日本(株) 本社・宮城大衡工場
2.Fグリッド宮城・大衡有限責任事業組合 Fグリッドセンター
3.(株)ベジドリーム栗原 第三農場
4.石巻市(震災被害地区)
5.グリーン・コミュニティ田子西
(一般社団法人仙台グリーン・コミュニティ推進協議会、国際航業(株))
6.仙台市ガス局 港工場

各施設の見学内容


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    1.トヨタ自動車東日本(株) 本社・宮城大衡工場


    トヨタ自動車東日本は、関東自動車・セントラル自動車・トヨタ自動車東北の3社が統合して2012年7月にコンパクト車の専門集団として誕生した会社です。東北を基盤として、地域と一体となり、「世界一の魅力あるコンパクトカーをお届けする」ことを目標に、ものづくり・人づくりを通じて競争力の高いコンパクト車の企画・設計・生産までを一貫して行っています。
    視察では、まず工場の概要、コンセプト(Compact、Flexiblity、Harmony)、特徴等について説明を受けた後、4ドアセダンの「カローラアクシオ HYBRID」やワゴンタイプの「カローラフィールダー HYBRID」など、コンパクトハイブリッド車を中心とした製造ラインを廻りました。Fグリッドからの電気と熱の活用による徹底した省エネルギーの実現、柔軟性と作業性を両立した高効率な生産ライン、徹底した品質管理、環境だけでなく地域の歴史にまで配慮した工場設計など、一つ一つに感銘を受け、日本の競争力の源泉である「最先端のものづくり」について理解を深めることができました。

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    2.Fグリッド宮城・大衡有限責任事業組合 Fグリッドセンター


    Fグリッドセンターでは、世界最高レベルの発電効率を有するガスエンジンコージェネレーション、太陽光発電、蓄電池、および、それらを最適に制御するエネルギーマネジメントシステムから構成されるエネルギー供給システムを視察しました。
    通常時は、トヨタ自動車東日本だけでなく、隣接する工業団地内の工場などに電気や熱を送ることで稼働を高め、高効率なエネルギー供給を実施する一方、万一の災害等による停電時には、工業団地内だけではなく、村役場などにも非常用の電力を供給して災害対策に役立てることが可能なシステムであることを現物を目の前にして説明を受けることで、経済性と安全・安心の両立という本システムの優れた特長を理解することができました。

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    3.(株)ベジドリーム栗原 第三農場


    ベジドリーム栗原は、栗原市に本拠地を置くパプリカの生産日本一を目指す農業生産法人です。トヨタ自動車グループが持つ製造業のノウハウと豊田通商グループが有する市場や流通に関する知見を活用した「農・商・工連携モデル」による農産物生産が行われています。
    視察では、まずパネル説明により、徹底した温室の断熱に加え、Fグリッドセンターのコージェネ温水を活用して温室を加温することで、加温費用を低減し、高い省エネルギー性とCO2削減を実現するシステムの概要を学びました。その後、実際に温室内に入り、パプリカの若木が並ぶ中、オランダの技術を改良した効率的なパプリカの栽培方法から徹底した品質管理に至るお話を幅広く伺い、低環境負荷で高品質な農産物生産の最新事例について理解することができました。

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    4.石巻市観光協会(震災被害地区)


    石巻市は、人口約15万人の、みちのく宮城第二の都市であり、北上川が育んだ恵みの大地と世界三大漁場・金華山沖を抱える自然豊かな食の宝庫です。そうした豊かな石巻市は、2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災により、市中心部の高台を除く市街地のほぼ全域が津波に襲われ、一瞬にして3000人の死者、500名近い行方不明者を出すという甚大な被害を受けました。
    視察では、バス車内で震災当時の映像を記録したDVDを放映し、当時の状況を再認識した後、石巻駅前から語り部のガイドさんにバスにご乗車いただき、被害が大きかった沿岸部を中心に市内を視察しました。草むらへと変わり果てたかつての住宅跡を見ながら、震災当日の生々しい状況、「各自がそれぞれに命の避難を」という震災の教訓、日本製紙石巻工場の徹底した日々の訓練と迅速な会社の避難命令により犠牲者が出なかった奇跡的な話など、語り部ガイドさんから実体験を交えた貴重なお話を伺いました。
    常に防災意識を持ち、避難訓練を身に染み込ませることの大切さを改めて強く感じるとともに、復興へと向かう石巻の‘今’をこの目で確かめることで、復興を願う人々の力強さを改めて実感しました。

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    5.グリーン・コミュニティ田子西


    グリーン・コミュニティ田子西は、震災を踏まえ、「防災」「エネルギー供給」に力点をおいた地域開発事業です。復興公営住宅街区(集合住宅)、スマートヴィレッジ街区等の戸建住宅街区、幹線道路沿いの商業街区など3つのエリアで構成され、最終的には1,500人規模の街へと成長する予定です。
    視察では、まず、インフォメーションセンターで概要説明を受けたのち、16戸のスマートハウスが立ち並ぶスマートヴィレッジ街区に移動し、太陽光発電、自立型エネファーム、蓄電池、電気自動車などを活用した最先端のエネルギーマネジメントシステムが設置された住宅内部を視察。デザイン・テクノロジー・コミュニティが一体となった新しい形のライフスタイルの実現や、日常のコミュニケーションの促進によるコミュニティの活性化と防災・防犯対策の推進など、ソフト面にまで配慮した先進的な取り組みについて伺うことができました。
    その後、復興公営住宅エリア内の「エネルギーセンター」に移動し、太陽光発電、蓄電池、仙台市ガス局との連携により導入されたガスコージェネレーションを組み合わせたスマートエネルギーシステムを視察。平時は、各世帯に設置されたタブレット端末により、デマンドレスポンスや「見える化」など効率的で経済的なエネルギー供給を行い、非常時には、避難拠点となる集会所に電力を集中的に供給するという、住宅におけるスマートエネルギーシステムの最新事例について理解を深めました。
    (視察協力:一般社団法人仙台グリーン・コミュニティ推進協議会、国際航業(株))

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    6.仙台市ガス局 港工場


    仙台市ガス局は、仙台市、多賀城市、大衡村など、3市3町1村の34万5千戸のお客さまに都市ガスをお届けする公営の都市ガス事業者です。
    視察では、まず、工場の概要説明として、天然ガスにLPGを添加して一定の熱量に調整した後、においをつけるという都市ガスの製造フローを学習した後、LNGを海水の熱により気化させた天然ガスと、石油資源開発(株)所有の「新潟〜仙台間天然ガスパイプライン」により新潟から引き込んだ天然ガスの2種類の天然ガスにより原料の2重化を図り、信頼性を向上させるという本工場の特徴を学びました。さらに、津波の状況を記録した当時の監視カメラ映像も上映いただき、オペレータの冷静な非常時対応や避難に関する生々しい体験談を伺いました。
    その後、工場内を廻り、浸水や配管屈曲などの被災現場において、機器や制御盤のかさ上げ、配管基礎強化、建屋の構造強化など、その後に講じた様々な津波対策を視察し、安全・安心への取り組みを詳しく伺いました。
    都市ガスの供給安定性の高さを理解したとともに、それを支えるひたむきな姿勢に強く感銘を受けました。


視察を終えて

今回の視察では、東日本大震災以降、高い関心を集めているスマートシステム、即ち、エネルギーの有効利用と地産地消、さらに、災害に強いシステムと街づくりの実現に向けた数々の先進的な技術や取り組みを間近に学ぶことができ、非常に有意義でかつ貴重な経験をすることが出来ました。
また、視察の途中、街の至る所に「頑張ろう」といった垂れ幕がかけられているのも印象的でした。東日本大震災から3年が経った今も、まだまだ途についたばかりの復興の現状を目の当たりにし、忘れてはならないこと、引き続き支援することの大切さを改めて感じました。
今回、被災地区を訪問し、築き上げてきた技術や生活が一瞬にして無に帰する自然の脅威を認識できたことで、自然と共存しつつ安全・安心を確保する難しさを改めて感じたと共に、その両立には、先進的な技術や取組みに加え、それを支えるひたむきな熱意(マインド)が大切であることを強く実感した視察となりました。
最後になりますが、視察団を快く受け入れて頂いた各視察先様に、この場を借りて御礼申し上げますとともに、引き続き、EPOCでは、持続可能な社会の構築と環境マインドの向上を目指して活動して参りますので、今後も皆様にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

EPOC会長会社事務局(東邦ガス(株) 環境部)