視察・調査

EPOC低炭素社会分科会
「視察 最適化したLED看板及び東京スカイツリー地区地域冷暖房施設」

はじめに

低炭素社会分科会では、低炭素社会に向けた先進取り組み事例や革新技術の調査・研究を通じ、EPOC会員各社のレベルアップと相互交流ならびに連携の促進を図っています。
今回の視察では低炭素社会を実現すべく、メーカーや商業施設が考案・導入する最新技術動向を見学致しました。


日 時:2013年10月11日(金曜) 12時30分〜16時
視察先:最適化したLED看板(表示灯株式会社)
東京スカイツリー地区地域冷暖房施設(株式会社東武エネルギーマネジメント)
参加者:20名(EPOC会員)
主 催:環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)低炭素社会分科会
概 要:CO2削減効果が期待できるLED照明が一般的にも利用されている今日、表示灯(株)では光源にLEDを使用した看板の更なる省エネ化を実現させた。片面、両面看板に内蔵したLEDの数を減らしても尚、今までと同様の明るさを維持し、むらなく均一な光を提供することが可能な表示灯(株)の技術を見学した。スカイツリーでは、地中熱を利用した大規模な冷暖房システムを導入していた。身近にある地中熱だが、地中熱を利用した冷暖房施設の利用はまだ少ない。今後、各地域での地中熱利用に期待したい。

表示灯鰍フ前での集合写真/LED看板の説明を受ける

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    LED光源を使った看板


    地球に優しいLED光源採用のメリットは4点。[1] 蛍光灯タイプの寿命10,000時間に対し、LEDタイプは40,000時間。[2] 割れにくく、熱くならず、有害な水銀を含まない等、蛍光灯タイプに比べ特殊な廃棄が不要。[3] 消費電力量は蛍光灯タイプの29.8%。[4] CO2排出量を蛍光灯と比べ70%削減できる。LED光源を用いた看板の主な4つの演出方法(バックライト方式、導光板方式、中空拡散レンズ方式、投光器方式)について、実物サンプルを用いて説明を受けた。

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    [1] バックライト方式


    片面表示の看板に最適な方式である。従来の看板の中では蛍光灯を使用していたが、次第にLEDの使用に変わってきた。初期には単純に多くのLED球を入れていたが、コストがかかってしまうことから、レンズで光を拡散してLEDの数を減らすアイデアが生まれた。厚さ3cmの看板の表示面直下にLEDを配列しても、影ムラが出ない工夫が施された。蛍光灯の場合は光の直進性が強いが、LEDレンズは画面からはね返り、光が戻ってくるため、ワット数が減っても照度が落ちることはない(2000ルクス以上が標準)。また、LEDの角度を調整し、効率的に全体を照らす仕組みであるため、明るさは従来と比べて変わらない。


    [2] 導光板方式


    高透過アクリル(導光板)の側面から光を入れて発光体を作る。横1m×高さ3m×幅10cmのパネルには従来、蛍光灯を全面に入れていたが、上下の側面のみにLED照明を配置するだけで、最大3m(駅の天井は3m)まで発光可能になる。東京駅の階段のゲートや柱がその例である。消費電力が少なく、上と下の幅木を外すだけでメンテナンスが簡単という利点もあるので、使用例が多い。発熱も小さく影にならないため手術用の照明としても活用されている。

    導光板方式の看板


    [3] 中空拡散レンズ方式


    両面方式の看板に最も有効なタイプの方式である。電源装置・ブレーカーが収納されている内部(通常は影になる部分)が、乱反射するという中空レンズの特性により隅まで光る仕組みである。新幹線の改札上部の看板では切符を見やすくするため、ダウンライト付きの看板があるが、本方式を採用したものである。「停電になった時でもお客様に見えやすいように」との発注者の要望から、サイン面のアクリル板は光の反射をなくすため、わざとスモークがかった白色を施している。また、東京駅新幹線乗り場の看板、高松駅広告枠、KIOSKの上にある表看板等にも採用されている。東日本大震災後には「停電時にも交番がどこにあるかわかる商品を作ってほしい」との要望により、単一電池8個で10日間光る商品について同方式を採用した。

    中空拡散レンズ方式を採用した東京駅新幹線乗り場の看板/投光器方式で照らされた地図


    [4] 投光器方式


    外面から画面を照射するポスターボードや説明版、地図等に使用されている。約3m幅まで照らすことができる。LEDでは隅部の光量が落ちることが多いが、端から端まできれいに見えるようにレンズで角度を工夫している。
    次世代照明として、LED光源と光ファイバー(直径1mm程度のガラス線)を組み合わせたものを検討中である。LED光源から放たれた光が、光ファイバーによって遠方の看板まで効率的に導かれる構造となる。例えば、高所に設置されたライトが切れた時や、足場や夜間工事などの遠方照射、滅多に交換しないロゴマークの表示等に最適である。

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    地域冷暖房システム供給


    「地域冷暖房システム」は、1か所または複数のプラントで冷水、温水等を作り、地域導管を通して一定地域内の冷暖房や給湯を行うシステムで、東京スカイツリータウンを支える。
    このシステムは、地中は夏涼しく、冬は温かいという温度差を利用した高効率の熱交換である。

    東京スカイツリータウンの地中熱採放熱場所

    地域冷暖房システム図


    メインプラントでは世界最高水準のターボ冷凍機をはじめとする高効率な熱源機器、蓄熱槽を設置している。
    「地中熱利用システム」は、基礎杭6本と、その杭に採放熱用の熱交換チューブを取り付ける「基礎杭利用方式」と、地下に掘削した垂直孔の中にチューブを挿入する「ボアホール方式」で構成されている。熱交換用チューブ内に水を循環させるシステムであり、地下水を汲み上げないことから、地盤沈下等悪影響を及ぼすことはない。


    熱交換用チューブ内に水を循環させ、熱交換(採放熱)することで、冷たくなったり、温かくなった水を「水熱源ヒートポンプ」を用いて、さらに冷たい冷水、さらに温かい温水に変換し、冷暖房用に供給する。地中の熱をくみ上げ、コンプレッサー、凝縮機、膨張弁、蒸発器を利用して熱エネルギーを変換することでエネルギー効率の高い冷暖房を可能にする。外気温は季節で変わるが、地中の温度は年間を通じてほぼ一定なので、大気と比べ、数段効率的な熱交換が可能になる。大気に熱を放出しないのでヒートアイランド現象の抑制にも役立つ。


    地中熱利用のイメージ


    メインプラントには約7,000トン(25mプール17杯分)分の蓄熱槽があり、高効率熱源機器で作られた冷水・温水を蓄えている。夜間電力で冷・温水を作り、昼間の電力使用量のピークを抑えている。個別で冷暖房を行う場合に比べ、このシステムを使用すると、エネルギー消費量は44%削減可能。1年間で約50%CO2排出量を削減できた。
    水面上には、酸素に触れることによる水の劣化を防ぐために、ファインボールが54,000個浮いている。災害時には蓄熱槽水を消防・生活用水として23万人分に提供が可能である。


    説明を受けた後、地下に2階に移動し、熱電系統図、インバーターターボ冷凍機、ヒーティングタワーヒートポンプ、水熱源ヒートポンプ、大容量水蓄熱槽、IPMモーター、24時間体制のプラントのコントロール室を見学した。


    地中熱利用のイメージ