視察・調査

EPOC低炭素社会分科会「大和ハウス愛知北ビル&リニア・鉄道館視察」

【はじめに】

低炭素社会分科会では、低炭素社会に向けた先進取り組み事例や革新技術の調査・研究を通じ、EPOC会員各社のレベルアップと相互交流ならびに連携の促進を図っています。

今回は愛知県建築物総合環境性能評価システム「CASBEEあいち」の「Sランク」を取得している大和ハウス愛知北ビルを訪問し、従来建築とし比較してCO2排出量を約55%低減できる環境配慮型オフィスをご紹介頂きました。また、リニア・鉄道館では、車両の省エネ化における技術進化の歴史を紹介致しました。


開催日時 平成24年4月18日(水曜) 9時〜17時30分
見学先 1.大和ハウス愛知北ビル
2.リニア・鉄道館
参加者 大和ハウス愛知北ビル(46名)、リニア・鉄道館(42名)

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    1.大和ハウス愛知北ビル(愛知県小牧市中央) 


    【概説】

    大和ハウス工業株式会社の「工業」はハウスの工業化を表しており工業化における廃棄物やCO2の排出量削減などに取り組んでいます。また、先進技術でエネルギーを賢く使う「Eco Smart Project」を立ち上げています。「Eco Smart Project」は自然の力を活かしながら負荷を制御する「パッシブ技術」、高効率の設備により、創エネ、省エネ、畜エネを行う「アクティブ技術」、これらを適切に制御する「エネルギーマネジメント」を柱に建物全体で環境性能を高める建築プロジェクトです。

    今回視察させて頂いた大和ハウス愛知北ビルは、2011年12月13日にオープンした、全体が環境配慮型のオフィスであり、1階にリビングサロン、2階に会議室、3階に執務室がある建物です。フロアごとに環境性能についてお話頂きました。

    「大和ハウス愛知北ビル南側での記念写真」と「大和ハウス愛知北ビル」の写真


    【壁面緑化】

    大和ハウス愛知北ビルにはフレーム式壁面緑化システムが取り入れられています。この壁面緑化方法は庇としての日射遮蔽とメンテナンスコストの抑制が可能な方法で、壁面に取り付けられた幅15cmのフレームに軽量土壌を入れ植栽し、地上に設置したポンプによりドリップチューブで給水します。水分量は水が垂れ無いようブロックごとに水分センサーでコンピューター制御され、少ない水量で緑を確実に維持しています。見学時点の法律では緑化率の計算は、地上1mの高さまでしか認めておらず、壁面緑化全てが緑化率に算入されるよう実証することが今後の課題とお話頂きました。重量:100kg/m2

    「壁面緑化」と「照明を落とし採光ブラインドの効果を確認する」の写真


    【採光】

    大和ハウス愛知北ビルでは様々な採光が試みられておりました。採光ブラインドによる昼光の利用では 光拡散フィルムを使い様々な角度からの光を集め、部屋全体に光を行き渡らせておりました。赤外線80%以上を反射するため室内への輻射熱を防止でき、冷房エネルギー削減効果もあります。光ダクトによる昼光の利用では、屋上からの昼光をそのまま1階エレベーターホールと4階オフィスの照明に使用していました。採光ブラインドと組み合わせ、晴天時には電力消費0に挑戦しております。 その他にも、アクリル板の端面からLEDライトを照射すると板の中を約43°で反射を繰り返し光が進んでいくアンビエント照明や、ビルディングのエコだけでなく、残業時にはワークスペースをまとめて不必要部は消灯するなどのエコワークスタイルも取り入れておられました。

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    2.リニア・鉄道館(愛知県名古屋市港区)


    【解説】

    3月16日に引退した300系新幹線車両は、民営化後に初めて開発した高速化車両です。国鉄時代に長く220km/h走行が続いていましたが、これを一気に270km/hに向上させるというプロジェクトとして着手しました。300系の開発は、新幹線車両を全般にわたって見直し、高速化や省エネルギー化を実現させたもので、その後の700系、N700系へと続くさらなる性能向上の転換点となったものです。現在、新幹線はかなりの省エネルギー性能を有していますが、この成果のスタートが300系新幹線だったと言えます。今回の視察では、300系新幹線の技術開発の概要について、300系新幹線の企画展「ありがとう300系〜のぞみの軌跡〜」にて当時プロジェクトに携わった技術者から話を伺いました。

    「新幹線車両展示の前で記念写真」と「館長から説明を受ける」


    【企画展「ありがとう300系〜のぞみの軌跡〜」】

    東海道新幹線は、最高速度270km/hの300系「のぞみ」の投入で東京〜新大阪間が2時間30分で結ばれ、人と人、都市と都市を繋ぐ重要交通手段として更なる進化を遂げました。270km/hの最高速度を可能にするため、先頭形状、車体の軽量化、交流電動機駆動システムの採用、台車の開発など様々な改良が加えられました。またパンタグラフのスパーク音の発生を抑制した他、車体表面の段差を減少させることによる空気抵抗の低減、回生ブレーキシステムの開発により発電エネルギーを架線に戻すことによる省エネルギー化など、環境対策も取られました。

    1999年3月には、快適性、車外環境に配慮し、車両性能を向上させた700系が営業運転を開始し、2007年からは700系の後継車両として次世代新幹線車両N700系の営業運転が開始しました。N700系は、700系をベースとして乗り心地や静粛性向上など、より一層の快適性を徹底した車両で、環境へのさらなる適合を努め、大幅な省エネルギー化を実現しております。二十数年も前に300系のぞみで取り入れられた最新技術や環境技術は、今も色あせて見えることはなく、更なる改善を加えて、700系やN700系に脈々と受け継がれています。