記念講演

記念講演『21世紀に向けて環境経営のもたらすもの』
講師:茅 陽一氏(慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授)

★設立記念行事として、『21世紀に向けて環境経営のもたらすもの』と題して、慶応義塾大学大学院の茅陽一教授による講演が行われました。同教授は環境経営分野の第一人者で、当日はCLUB発足ということに関連して、「(環境分野で)企業に望むこと」そして「企業間協力の意義」について、お話しいただきました。

●ISO14001 と企業の環境行動
「環境パートナーシップ・CLUB」発足のきっかけはISO14001認証取得企業の集まりでした。
予想した以上に、日本ではISO14001シリーズの規格が根づき始めています。
TQC活動のようなボトムアップ的型が一般的だった日本の企業風土ですが、ISO規格の取得はトップダウン型の取り組みです。こと環境に関しては、トップが方向性を示したほうが影響が大きい。ISO14001規格取得企業の増加は、環境問題に対して意欲的に取り組む企業のトップが多いことの現れと見られます。

●企業間の協力
企業間協力の意義については、パイを大きくすることによる効用が大きい。一企業だけでは限界があることも、さまざまな企業が協力することによって解決が可能になります。
例えば、ある企業にとっては廃棄物でも、別の企業では原料として利用できることがあります。また、廃棄物をまとめて処理することで効率を上げることも可能です。コストの問題についても、企業が共同して需要拡大を図れば、量産効果でコストダウンすることもできます。

●民生部門との協力
環境問題に取り組むためには、リサイクルなどの面で、消費者・利用者である民生との協力が欠かせません。この場合も複数の企業が共同で行うことが望まれます。例えばリサイクル事業を行う場合、一企業単独での事業より安定的な運営が図れることはもとより、責任を分散できるため企業、民生とも参加しやすくなります。

●企業市民としての取り組み
企業間協力は、全体のメリットと自社のデメリットをいかに整合させるかが課題です。これは環境問題に対して、企業としてどう取り組むかということにつながります。
この点については、将来の利益を考慮した長期投資と位置づけたり、環境時代の企業市民義務といった観点から関わっていくケースが増えています。今日の環境問題は過去の局所的な公害問題と異なり、社会全体の健全な発展を図るものであり、企業が参加することは当然のこと。企業市民として行っていくべきことという考え方があり、世界的にその動きはすでに起こっています。CLUB発足を機に、国際社会での環境行動に注視してほしいと思います。





講師プロフィール   

茅 陽一

略歴

1957年 東京大学工学部電気工学科卒
1962年 東京大学数物系大学院修了・工学博士
1978年 東京大学工学部電気工学科
1995年 慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授現職
(財)地球環境産業技術環境機構・副理事長/所長
科学技術振興事業団戦略基礎研究 環境関連研究統括
京都大学客員教授茅陽一氏
名古屋大学客員教授(中部電力寄付講座)
公職
科学技術庁参与
総合エネルギー調査会会長
産業構造審議会地球環境部会長
産業技術審議会委員
中央産業審議会委員
環境管理監査規格審議委員会委員長 ほか多数


特別対談   環境交流会
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