本博覧会は、大阪(1970年)、セビリア(1992年)に次ぐ今世紀最後の一般博覧会で、21世紀初めに、持続可能な開発をしていくために人類が直面する地球的諸課題を見据え、国や個人、企業が地球レベルで解決策を考えようというもの。ドイツ史上初の一般博覧会であり、東西ドイツ統一後10年目、西暦2000年という歴史的節目の年に開催されることから、世界各国の注目も高い。

概  要
【ホームページアドレス】 http://www.expo2000.de/
【開催地】 ドイツ連邦共和国 ニーダーザクセン州 ハノーバー市(人口約60万人)
【開催期間】 2000年6月1日(木)〜10月31日(火)153日間
【会場規模】 総面積 160ha(ハノーバー国際見本市会場の90haを含む)
【基本テーマ】 「人間(Humankind)−自然(Nature)−技術(Technology)」
【サブテーマ】 1.健康と栄養
2.生活と労働
3.環境と開発
4.コミュニケーションとインフォメーション
5.レジャーと移動性
6.教育と文化
【出展団体】 173の国・地域、国際機関が公式参加
【予想総入場者数】 約4000万人(月平均800万人) * 6月の入場者数実績 230万人

(参考)
【愛知万博ホームページアドレス】 http://www.expo2005.or.jp/
【JETROホームページアドレス】 http://www.jetro.go.jp/fa/j/hannover/


【プレゼンテーション担当者】
    寺沢館長、石垣副館長

【プレゼンテーションの内容】
  事務所棟のプレゼンテーションルームで、実際に建材として利用されている紙管の一部に触れながら、日本館の特長であるリサイクル構造やコンセプト、来場者の興味を喚起するための様々な工夫など、完成までの苦労話を交えながら、詳しく説明していただきました。

【展示内容について】
  博覧会史上初の試みである再生紙を建材とするパビリオン。
主要建材となる紙管は、ドイツ国内で調達したリサイクルペーパーで作られ、解体後もリサイクルすることで、産業廃棄物をゼロに近づける。
館内には天井から紙膜を透かした自然な光を取り入れ、基礎部分には、コンクリートの仕様を最小限に抑えるため砂を充填している。事務所棟は、会期後のリユースを考え、コンテナユニットを利用している。
リサイクルという概念を追求した日本館は、21世紀が大量消費型社会から循環型社会への意識転換が必要な時代となることを示唆している。
展示内容は、地球温暖化問題をメインテーマとし、CO2排出削減に向けた具体的な取り組み等を映像中心で紹介している。

【視察の成果とEPOCへの提言】
  日本館のコンセプトは、EPOCのコンセプトそのものであることから、万博でそれをどのように表現し、来場者に対して何をどのように伝えるべきかを考えるよい機会となりました。日本館を訪問して、「環境」というテーマについて分かりやすく表現し、来場者に興味深く伝えることがいかに困難であるかを痛感させられました。
今後のEPOCの活動を通じて、誰に対して何をどのように伝えていくかという問題を常に意識していくことが重要ではないでしょうか。

 

【ホームページアドレス】
  http://www.gruener-punkt.de/de/

【プレゼンテーション担当者】
    Group Head/Ms.Edelgard Bially,M.A.

【プレゼンテーションの内容】
  「cycle bowl」とネーミングされたパビリオン全体を順路に沿って案内してもらいながら、各ゾーンの展示内容について詳しい説明をしていただきました。その後、別室にて会社の経営状況などについての質疑応答が行われました。

【会社概要・展示内容について】
  DSD社は、ドイツのリサイクル法に基づいて、国内におけるリサイクル業務を担当するために設立された民間のリサイクル会社。
株主は18700の企業等。
リサイクル費用は、グリーンマーク費用として容器包装の種類ごとに従量制で企業が支払う。各企業はリサイクル容器にグリーンマークを表示し、各消費者はDSD社が設置する黄色いコンテナにそれを投棄すればよいというしくみ。
民間企業ながら、利潤は追求せず、グリーンマーク費用のみを運営資金としている。利益が生じた場合は、グリーンマーク費用を下げて利益を還元する。
パビリオンの中央が吹き抜けになっており、1時間ごとに繰り広げられるリサイクルを形で表現した人工竜巻を作り出すショーは、なかなか見応えがある。その周囲をらせん状に通路が設けられ、リサイクルの過去−現在−未来を、DSD社の取り組みを中心に、環境問題の啓蒙、問題提起をしながら、ユニークな表現方法を用いて来場者が興味深く観覧できる様々な工夫がみられた。

【視察の成果とEPOCへの提言】
  DSD社の取り組みを通じて、環境先進国といわれるドイツのリサイクル事情を学ぶことができました。技術的な面はもちろん、リサイクルシステムの在り方や方法についても考える必要があると感じられました。
それぞれの国や地域に適した方法、無理のないシステムを構築することは、EPOCにおける一つの研究課題でもあり、その成果が実社会に活かされていくことを期待しています。

 

【プレゼンテーション担当者】
    Director of Exhibition Thematic Area/Mr.Ulrich Frohnmeyer

【プレゼンテーションの内容】
  テーマパークでは、本博覧会のいくつかのテーマを表現し、展示しているが、我々は特に「食」「環境」を取り上げたゾーンを見学しながら、実際にこのゾーンの企画からプロデュースまでを担当した方から詳しい説明を聴くことができた。その後、プレゼンテーションルームで質疑応答が行われ、内容は彼らの日本館への評価にまで及び、日本館に対する開催国ドイツ人からの率直な意見を直接聴くことができる貴重な機会となりました。

【展示内容について】
  「食」のゾーンは、非常にユニークな表現方法を用いており、興味深い展示内容。
世界各国の人々の舌の写真によって大きな舌を形成した展示は、見るからに不気味だが、舌(味覚)は世界各国一人一人異なるが、互いの「食」を味わうことで、舌を通じて重要なコミュニケーションを図る手段となる「食」の重要な役割を表現している。
また、壁に貼られた600枚の皿に世界各国の代表的な食べ物が記してあったり、巨大スクリーンが一本一本の麺を象って作られていたり、壁に実際の野菜や果物など植物が植えられ、食料危機についての未来への問題提起をするなど、展示に趣向が凝らされていた。
「環境」のゾーンは、特に未来を担っていく青少年に「環境」について考えてもらうことに主眼を置き、展示の一部を実際に専門学校の学生らに企画からプロデュースを任せ、映像に頼りがちな表現方法をモノの展示中心にし、「気候」「水」「森林」「田舎」「都市」の5つのカテゴリーで展開している。
我々が日常生活において当たり前にしている行為がいかに環境に影響を与えているか、自然がいかに大切かなどについて、また、環境の変化を長期的な視点で表現している。

【視察の成果とEPOCへの提言】
  担当者との質疑応答も含めて、博覧会における展示内容や表現方法について、いろいろと考えさせられました。博覧会の意義やターゲットに適したものとは、どういうものなのか。テーマパークと日本館の差異に象徴されるように、それぞれ博覧会に対し様々な考え方があるようです。
テーマパークは、一般の来場者を対象にテーマを体感し、心に感動を与える展示内容や表現方法を工夫し、日本館は、パビリオンの構造そのものを工夫することで「環境」を表現し、どちらかというと産業界を中心に環境への取組みを解説・展示するという方法を取っています。
EPOCにおいても、この博覧会と同様に、産業界はもちろん、広く一般に対しても啓発・交流を行っていくための活動内容や表現方法の工夫が、今後も大切な課題となるでしょう。