ハンブルグ−ハルブルグ工科大学は、1978年に設立された比較的新しく産学共同研究を推進する目的で設立された大学で、ドイツ第2の都市であるハンブルグ市の南に位置している。
同大学では、都市環境工学,システム工学,土木・海洋工学,情報・通信工学,材料設計生産工学,プロセス・エネルギーシステム工学に関する研究・教育を推進している。
今回は、プロセス・エネルギーシステム工学研究部門化学工学(粒子工学)分野・ウェルサー教授を訪問した。ウェルサー教授は、粒子工学を専門とし、特に、流動層技術を応用した石炭・バイオマス発電技術、廃棄物や汚泥処理技術開発に関する研究に関しては、世界的権威である。
ドイツにおけるエネルギー供給量(2001)は石油131.6 Mt-oil(39.3%),石炭84.4 Mt-oil(25.2%),天然ガス74.6
Mt-oil(22.2%),原子力38.7 Mt-oil(11.5%),水力等5.8 Mt-oil(1.7%)であり、石炭の占める割合が他国より比較的多い特徴を有している。電力の供給構成(1999)は、石炭286.1TWh(51.9%),原子力169.8TWh(30.8%),天然ガス55.1TWh(10.0%),水力19.3TWh(3.5%),石油6.1TWh(1.1%),その他14.9TWh(2.7%)であり、石油火力はほとんど無く、石炭火力が主力であるとともに原子力も構成比としては大きい。
ドイツ政府は2010年に電力の12.5%、一次エネルギーの4.2%を再生可能エネルギー源からのものにする目標を立てており、現在ではさらに再生可能エネルギーの導入を促進するために目標を修正する動きにあると言われ、2010年にすべてのエネルギーの12.5%を再生可能なエネルギー源からに、これを2020年に20%、さらに2050年には、50%とするという内容であるとのことである。CO2削減量としては、2020年までに1990年比で40%削減するという長期目標を非公式ながら持っているようである。2050年の電力供給構造の姿としては、35%が化石燃料由来で65%が再生可能エネルギーによるものと予測している。再生可能エネルギーのうち風力が30%,バイオマスが16%,太陽エネルギー11%,水力・地熱エネルギー7-9%となっている。これらの目標達成のために、現在の再生可能エネルギー源による電力の固定買い取り制度を強化し、太陽光発電からの買い取り価格を59ユーロセント/kWhに引き上げ(ただし大規模太陽光発電所は低減)、小規模バイオマス発電所や地熱発電所も同様に引き上げを検討、2008年までに稼動開始した洋上風力発電の電力は12年間9.1ユーロセント/kWhで買い取るということである。
なお、現在のバイオマス発電の約2/3はゴミ堆積場で回収されたガスを燃料としたもので、約250のゴミ堆積場に回収ガスを利用した発電施設が設置されている。しかし1995年に成立したTASi法により、2005年からは、生活系廃棄物(都市ゴミ)中に有機物質が5%以上含有されている場合には埋設処分することができなくなるので、今後は直接廃棄処分される割合が多くなると見込まれている。バイオガス利用を目的とした生ゴミの分別回収と埋設処分のシステムは廃止される方向に加速しており、ゴミの再資源化とゴミの処分のあり方とをめぐる施策において日本と大きく異なる背景がある。
これらの背景から、これまでにNoell conversion process, Siemens Schwel-Brenn processやThermoselect
processなどの新しいゴミ処理技術が開発され、金属資源の回収と灰溶融固化を伴うプロセスが稼動を開始している。また、排ガス処理法の革新にも取り組まれ、これまで多段処理によるSO2,
HCl, HF, HBr等の排ガスクリーニングのプロセスを一段で完了する技術(NID法)が実用化されており、ゴミ処理コストの低減と処理レベルの高度化を同時に達成している。
一方、都市ゴミ処理の課題とCO2削減の同時解決を狙うために、石炭火力発電所において都市ゴミを石炭と混焼する技術の展開も図られており、2002年においては約3万トンが同プロセスで処理され、2005年にはさらに拡大して約8万トンが処理される見込みである。本技術の適用性に関しては、ハンブルグ−ハルブルク工科大学をはじめ、大学が連携してパイロットプラントを用いた評価を実施している。
本訪問では、以上のエネルギーやゴミ処理を主とした環境対応技術の紹介のほかに、ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)用電解膜を代表とするマイクロリアクタデバイスやガラス基材太陽光パネルの高速製法に関したエネルギーデバイスの最新技術についても説明され情報提供がなされた。その後、流動層式都市ゴミ/石炭混焼装置,マイクロデバイス装置を見学し、最新の研究の動向と実態について理解を深めた。 |