近年、企業は社会との関りが増えている。企業活動のあり方をPRさせていただき、皆様からご批判をいただくことが企業経営にとって大変重要になってきている。また、最近では、企業の環境に取り組む姿勢が経済性、社会性と並んで企業評価の一つとなっている。
今後、企業は環境を重視した活動をしなければならない。我が社も"環境"を経営方針の最重点課題としている。昭和40年代は公害問題に対して規制への対応、特に地域への対応に力を入れて活動を行ってきた。この時代の地域の公害は、加害者(企業)と被害者(地域の人々)の関係であった。しかし、最近の環境問題は、グローバルで地球規模である。一部地域の人々の問題ではなく、地球すべての人々に配慮していかなければならない。
1962年、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」という本がきっかけとなって、農薬や合成洗剤の環境汚染により動物あるいは人類への影響に対して警鐘が鳴らされた。1972年には、ローマクラブが「成長の限界」という報告書で「このまま人口が増加し、経済発展が続くと100年以内に世界経済の発展が止まる。」と警告が発せられた。その後、1980年代には南極でオゾンホールの存在が明らかになった。1990年代に入ると、二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの影響による地球温暖化など環境問題はさらに深刻になってきた。二酸化炭素の削減は各国の利害もあり、難しい問題であるが、大気中の二酸化炭素の上昇は"待ったなし"の現状である。
エネルギーの大量消費による二酸化炭素の排出は、我々一人一人が問題として捉えなければならない。企業の環境保全の取り組みは、トップの基本方針に位置付けなければならない。
(株)デンソーでは、エコビジョン2005を制定し、国内外グループ企業全体で、グリーン工場の実現に向け環境負荷物質の削減、環境行動に関する対外連携の促進と情報発信の充実に努めている。また、製品の製造、市場での使用、廃棄に至るすべての段階において、環境に配慮した開発・設計、生産活動の推進は、環境委員会で私が委員長を勤め、確実に実行する体制を整えている。
こうした活動が最近、社会に評価され認められつつある。日経新聞の環境経営ランキングで99年度は89位と恥ずかしい結果であったが、2000年は6位と高いランクを戴いた。
(株)デンソーは自動車部品というビジネスの中で、できるだけ世の中にお役に立ち、「環境保全あるいは省エネルギーに効果を発揮するもの」を世の中に先駆けて作っていこうと努力している。
地球環境問題は特定の人達の問題ではなく、一般市民一人一人の問題であり、より良い生活を望めば望むほど多くのエネルギーと資源を消費する。
そして、好むと好まざるとに係らず地球環境を汚染する。そうしたことを考えると、まずは一人一人が少しでも環境保全に役立つよう行動しなければならない。そのためには、ライフスタイルから考え直さなければならない。
ITについても日本はインターネットの接続率が低くIT後進国といわれているが、これは間違いと思う。パソコンの使用はエネルギーを消費し、環境破壊にもつながる。また、個室でパソコンに向かうことが健全か。人間は人と人との"ふれあい"の中から成長していくものである。インターネットの接続率を高めていくことが日本の将来にとって良いことか、もう一度、考え直さなければならない。
インターネットの接続率だけでは評価できない。実際に、もの作りの企業ではITは進んでいる。
地球環境問題は、一人一人がやれることをしっかりやることが大切である。
最後に、EPOCが中部地方から環境保全情報を発信することは、すばらしいことであり、私達も微力ながらお手伝いをしていきたい。
|