啓発・交流部会 啓発分科会では、(財)東海技術センターおよび(社)中部産業連盟との共催で「環境啓発講演会 〜環境新世紀を迎えて〜」を開催しました。
年度末の多忙な時期にもかかわらず、EPOC会員企業の方々をはじめ一般企業などの方々から294名ものご参加をいただき盛況の内に終了することができました。
 

  日 時:  平成13年3月5日(月)  13:30 〜 16:00

  場 所: 今池ガスビル 9階 ガスホール

  参加者数:  294名

【プログラム】
13:30〜13:45 主催者挨拶 環境パートナーシップ・CLUB(EPOC)会長 安井義博
13:45〜13:50 来賓挨拶 経済産業省中部経済産業局長 市川祐三 氏
13:50〜14:50 講演T 「循環型社会構築に向けた企業経営のありかた」
 (株)デンソー 代表取締役社長 岡部 弘 氏
14:50〜15:00 休憩  
15:00〜16:00 講演U 「循環型社会における環境社会貢献のありかた」
ジャスコ(株) 名誉会長相談役 岡田卓也 氏
 
【講演内容】
講演T 「循環型社会構築に向けた企業経営のありかた」
(株)デンソー 代表取締役社長 岡部 弘 氏
 

 近年、企業は社会との関りが増えている。企業活動のあり方をPRさせていただき、皆様からご批判をいただくことが企業経営にとって大変重要になってきている。また、最近では、企業の環境に取り組む姿勢が経済性、社会性と並んで企業評価の一つとなっている。

 今後、企業は環境を重視した活動をしなければならない。我が社も"環境"を経営方針の最重点課題としている。昭和40年代は公害問題に対して規制への対応、特に地域への対応に力を入れて活動を行ってきた。この時代の地域の公害は、加害者(企業)と被害者(地域の人々)の関係であった。しかし、最近の環境問題は、グローバルで地球規模である。一部地域の人々の問題ではなく、地球すべての人々に配慮していかなければならない。

 1962年、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」という本がきっかけとなって、農薬や合成洗剤の環境汚染により動物あるいは人類への影響に対して警鐘が鳴らされた。1972年には、ローマクラブが「成長の限界」という報告書で「このまま人口が増加し、経済発展が続くと100年以内に世界経済の発展が止まる。」と警告が発せられた。その後、1980年代には南極でオゾンホールの存在が明らかになった。1990年代に入ると、二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの影響による地球温暖化など環境問題はさらに深刻になってきた。二酸化炭素の削減は各国の利害もあり、難しい問題であるが、大気中の二酸化炭素の上昇は"待ったなし"の現状である。
 エネルギーの大量消費による二酸化炭素の排出は、我々一人一人が問題として捉えなければならない。企業の環境保全の取り組みは、トップの基本方針に位置付けなければならない。

 (株)デンソーでは、エコビジョン2005を制定し、国内外グループ企業全体で、グリーン工場の実現に向け環境負荷物質の削減、環境行動に関する対外連携の促進と情報発信の充実に努めている。また、製品の製造、市場での使用、廃棄に至るすべての段階において、環境に配慮した開発・設計、生産活動の推進は、環境委員会で私が委員長を勤め、確実に実行する体制を整えている。
 こうした活動が最近、社会に評価され認められつつある。日経新聞の環境経営ランキングで99年度は89位と恥ずかしい結果であったが、2000年は6位と高いランクを戴いた。

 (株)デンソーは自動車部品というビジネスの中で、できるだけ世の中にお役に立ち、「環境保全あるいは省エネルギーに効果を発揮するもの」を世の中に先駆けて作っていこうと努力している。
 地球環境問題は特定の人達の問題ではなく、一般市民一人一人の問題であり、より良い生活を望めば望むほど多くのエネルギーと資源を消費する。
 そして、好むと好まざるとに係らず地球環境を汚染する。そうしたことを考えると、まずは一人一人が少しでも環境保全に役立つよう行動しなければならない。そのためには、ライフスタイルから考え直さなければならない。

 ITについても日本はインターネットの接続率が低くIT後進国といわれているが、これは間違いと思う。パソコンの使用はエネルギーを消費し、環境破壊にもつながる。また、個室でパソコンに向かうことが健全か。人間は人と人との"ふれあい"の中から成長していくものである。インターネットの接続率を高めていくことが日本の将来にとって良いことか、もう一度、考え直さなければならない。
 インターネットの接続率だけでは評価できない。実際に、もの作りの企業ではITは進んでいる。
 地球環境問題は、一人一人がやれることをしっかりやることが大切である。
 最後に、EPOCが中部地方から環境保全情報を発信することは、すばらしいことであり、私達も微力ながらお手伝いをしていきたい。

 
講演U 「循環型社会における環境社会貢献のありかた」
ジャスコ(株) 名誉会長相談役 岡田卓也 氏
 

 私は四日市市で青春時代を過ごした。当時、四日市市は"四日市ゼンソク"で一躍有名になった。現在はすっかり青い空の街に生まれ変っているが、私は、青春時代にこうした経験をし、環境問題に多いに関心を持っていた。

 ジャスコ(株)が誕生して20年経った1990年頃、21世紀はどういう時代か考えた時、21世紀は"南北問題"で、キーワードは、"環境問題"と思った。
 そこで、ジャスコ(株)をはじめとするイオングループ全体の利益の1%を社会貢献に使うことを考えた。さらに、それだけでは不足と考え環境問題に対して、イオングループ環境財団を設立した。
 12〜13年前は、日本ではまだ環境問題への認識が低い時代で、私共の環境財団は、すぐに環境庁から認可を受けることができた。
 イオングループ環境財団の基本財産は、私の保有する株(時価総額約250億円)を充てて活動している。イオングループ環境財団は企業活動の一環である。これからの企業は、地域社会あるいは、地域社会の人々からどれだけ評価されるかが大切であり、商品や人材などではなく目に見えない企業の価値を上げる必要がある。

 昔、日本では鎮守の森が各地にあったが、それが少なくなってきている。これを踏まえて私たちは、ショッピングセンターに木を植え続けている。これまでに、マレーシア、チンタオなどのショッピングセンターで、地域の方々の協力をお願いして400万本の木を植えた。中国北京市人民政府と共同で取り組んだ「万里の長城・森の再生プロジェクト」は、森林が消滅してしまった万里の長城付近に緑を蘇らせようという国際プロジェクトで、国内外から広くボランティアを募り、森の再生のために、モウコナラなどの苗木約39万本を98年から3年間で植樹した。木を植え続けることで、ショッピングセンターのファンを獲得している。小売業の最大の特徴は、お客様に直接、語りかけることができることである。これを生かしてこのような活動を行っている。今年からは、中国で砂漠化防止、国内では里山保全プロジェクトを地域の方々と一緒に各地で取り組んでいく。また、子供達にも環境問題を考えてもらうため環境省と協力して中国、タイ、マレーシア等でも"子供エコクラブ"を開催している。子供達にも環境問題を認識してもらうことが大切である。

 昨年までにジャスコ(株)は、全店舗でISO14001を取得し、店頭で回収したトレイの再利用や、プライベートブランド(トップバリュー)で環境負荷の少ない原料を使用した商品の開発を行っている。
 環境問題は21世紀の最大の問題であり、企業にとっても最大の問題である。ジャスコ(株)は今年30周年を迎え、イオン(株)に名称変更する。グローバル10(小売業で世界十指)に入ることを目標にしている。これからの取り組みが生き残りに係っている。
 同時に、小売業は平和、地域、人間産業である。小売業を続けるためには、お客様からどのように評価されるかが大切である。
 21世紀に企業が生き残れるかどうかは、環境問題への取り組みと考えている。

 
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