特別対談

特別対談『循環型経済社会における環境経営戦略』
          講師:山路敬三氏(日本テトラパック(株)会長/キヤノン(株)名誉顧問)

ナビゲーター:架谷昌信(名古屋大学教授)

★『循環型経済社会における環境経営戦略』をテーマに、山路敬三氏と架谷昌信教授との特別対談が行われました。架谷教授をナビゲーター役に、環境経営の先駆者である山路氏の考え方、経験をお話しいただきました。

●環境経営の原点
「環境経営」を理念としています。そのきっかけとなったのは1965年、キヤノンの開発課長として関わった複写機への事業進出でした。当時、先行メーカーが強く、勝負にならないのではと思われたところ、環境に配慮した製品を開発し、成功を収めました。この経験から「環境を考えると新しい技術が生まれる」との発想を持ちました。

●環境への対応とコスト対策
89年にキヤノンの社長に就任すると、“エコロジーのキヤノンへ”との方針を掲げ、その実現化に取り組みました。具体的な成果として、カートリッジのリサイクル(90年)、無鉛ガラス(91年)、BJ捺染(92年)、BS7750認証取得(95年)などがあります。
当然、苦労もありました。省資源・省エネルギー設計はコストダウンにつながるので方向性に問題はありません。が、いかに機能を落とさず、コストを上げず(減らし)、環境に対応した設計を行うか…。「技術に限界はない」をモットーに、技術者の腕の見せどころ!と開発部門にお願いしました。
一方、リサイクルは再利用がコストダウンにもつながったのですが、輸送費などを含めたトータルでのコスト増は避けられませんでした。そこで、CO2排出量を減らすための費用と割り切って進めました。結果として、ヨーロッパでは世界的なリサイクルが評価され、販売面でも効果が見られました。

●環境社会のモノづくり
21世紀のキーワードとして、IT社会、さらなるグローバル化、生活の質重視、高齢少子化などが挙げられますが、すべての基本にあるのが「環境保全型」ということです。また、IT化が進んでもハードウェアはより必要不可欠なものとなり、製造業の重要性は高まると見られます。今後は環境にマッチした製品に置き換わっていくと考えられ、そこで新しい産業が興る可能性もあります。こうした環境産業は日本の得意とするところであり、使命ともいえるでしょう。 日本産業の心臓部とも言える中部地区で「環境パートナーシップ・CLUB」が発足したことに、大きな期待を寄せています。環境先進国として、世界に提案していけるものを、ぜひこのグループで作り出していただきたいと考えています。





講師プロフィール

山路敬三

山路敬三氏 略歴

1951年 東京大学理学部物理学科卒
キヤノンカメラ(株)(現キヤノン(株))入社
1989年 代表取締役社長就任
1993年 代表取締役副会長就任
1995年 相談役就任
日本テトラパック(株)取締役会長就任
公職
スウェーデン王立科学技術アカデミー会員
(社)日本能率協会常任理事
(社)日本能率協会審査登録センター上級経営管理者
(社)日本工学アカデミー副会長
地球環境専門部会部会長
日本経営者団体連盟副会長
構造改革特別委員会委員長




ナビゲータープロフィール

架谷昌信

架谷昌信氏 略歴

1963年 名古屋大学工学部科学工学科卒
1968年 名古屋大学大学院工学研究科博士課程修了
1978年 名古屋大学工学部科学工学科教授
1994年 名古屋大学工学部長
1997年 名古屋大学理工科学総合研究センター長
公職
(財)中部科学技術センター 研究開発推進委員会委員
中部通商産業局総合エネルギー対策推進本部 推進会議会長


記念講演   環境交流会
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