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訪問場所

アスネス発電所
 
対応者
Mr. Erling Pedersen (Executive manager)
 
ディスカッションの内容
ある産業の廃棄物が、別の産業にとっては貴重な原料になるという夢のような話が、デンマークのある都市で現実になった。カルンボー市の6大企業と同町と隣接する5自治体は、過去25年間にわたって、産業共生(industrial symbiosis)と名づけられた「環境への優しさ」を基本理念にした産業育成の画期的アイデアを展開してきた。
 「共生」とは本来、2つの種が相互利益のために緊密な関係を保つことを意味しており、ここでいう「産業共生」とは、業種の異なる企業同士が、製造過程で生まれる廃棄物を取引し合う協力関係を指している。カルンボーの「産業共生」は、5つの自治体と7大企業 −アスネス発電所、プラスターボード製造会社Gyproc、医薬品製造会社Novo Nordisk、製油会社 Statoil− 他が参加するネットワークが主体となっており、参加企業間でお互いの利益(経済、環境)を考え、それぞれの廃棄物を原材料として利用するために取引している。この協力関係は、資源の節約と環境負荷の低減に貢献している。このうちアスネス発電所は、電力供給に加え都市への熱供給、及び製油会社、医薬品会社へのスチーム供給を行っている。電気と熱を同時生産することにより、別生産のときと比べ燃料の利用効率が30%も上がった。
このシステムが導入されて以来、カルンボーの約5,000戸の家庭に熱供給が行われている。同発電所で発生するスチームのうちおよそ20%は製油会社に供給され、医薬品会社では殺菌、加熱用に利用している。
こうした協力関係を過去25年続けてきた中で、対外業務・データ収集・パートナーシップ評価を行う調整母体の設立を望む声が参加企業の間に高まり、ネットワークの調整役である組織が作られた。このカルンボーで実施されている「産業共生」は世界的に大きな注目を集めている。これまでに「共生」システムの参加企業が達成したコスト節減は何億クローネにも上る。システムへの設備投資は企業全体で約5,000万USドルだが、25年間でのコスト節減を合計すると優にその倍になる計算である。企業間の信頼関係「共生」ネットワークは、各参加企業が近距離に位置していなくては成立しない。企業間距離が遠ければ輸送コストが高くつき利益は望めない。また発生する副産物が他企業の需要を得ることはもちろん、企業間に開放的な関係を築く土壌がなくてはならない。カルンボーのネットワーク参加企業は互いに周知の間柄であったため、信頼に基づいた協力関係を築くことができた。
 
 
視察の成果とEPOCへの提言
企業間連携並びに地域との連携を図ったシステムの構築に向けてEPOCとしては以下の項目に注目したい。
 (1)企業間の信頼をベースとした取組の構築
 (2)地域密着型の活動の展開
  (地域社会の活性化に貢献する提案、提言活動の展開)
 (3)競争と共生の両立
 (4)法律の先を行くボランティア的活動の展開
 (5)コンソーシアムを束ねる中立、公正な調整母体の設立
EPOCはこの中立母体の核となりうる存在であり、今後の展開では企業間、地域間連携によりカルンボーを超えた環境先進地を実現できる素地があると思われる。
 
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